9. 伝えたいこと

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忙しなく過ぎていく日々。当たり前の日常。 時間が経てば…癒えるものもある。 『はい、ではよろしくお願い致します。失礼します』 「亜緖ー!おつかれ」 『おつかれ〜優実。さすがに今日は疲れたね』 「ねぇー寒いし冷えるし体力も持たないんどけど〜」 『分かる(笑)でも、やっとお昼だね』 「よーし!しっかり食べて午後も頑張るか!今日は仕事終わったらクラブだし」 『またー?(笑)』 あれから、半年が経った。季節もすっかり移り変わって、世の中は冬景色だ。 制服も冬服に変わり、街にはコートを着てマフラーをした人達でいっぱい。 私は今日も、この会社で受付嬢として働いてる。 「ねぇねぇ、亜緖も今日クラブ一緒に行かない?」 『んー…私はいいや!寒いし』 「もー!そろそろ気分転換して新しい男でも見つけないとだよ?無理に忘れなくても、また出会いがあるだけで違うんだから!」 『はは、そうだね』 「もー」 優実と話しながら、私は受付の後ろ側に少しだけ飾ってある青い薔薇にお水をあげた。 あの時の花束は、こんなに日が経てば枯れてしまったけど。 この薔薇は私がまた自分で探して買ってきたものだ。 あの日から…癒えた傷もあるけど、癒えていないものもある。 「あ!ごめん、ちょっと先出ていい?財布忘れてきたから取ってくる!」 『うん、いいよーこっち締めとくから』 「ありがとうー!」 ウィーーン 優実が去った後、私以外誰もいなかったフロア。だけど、突然コツコツと足音が響いてくる。 その音の方へ目を向けると、スーツにコートを着たサラリーマンがこちらへ近付いてきていた。 『……』 「あ、こんにちは!僕、アルファデザイン会社の香坂と申しますが…」 その人は、こげ茶色の短髪の髪の毛をしていて。屈託のない笑顔を浮かべて、私に声をかけてきた。 パッと見ても、明るい雰囲気で人当たりが良さそうな営業マンという感じだ。 『……はい。こんにちは。香坂様ですね。少々お待ちください』 「あ、はい!」 待ってる間も、ニコニコして私を見るその人は…もう私の知ってるあなたじゃないんだよね。 でも… どんなあなたでも、私は… 『…お待たせしました。こちらが預かっていた書類になります』 「ありがとうございます〜確かに!あ、」 『え?』 「それ、青い薔薇ですか?綺麗ですね!」 『…っあぁ、そうなんです』 「こんなのあるんだぁ〜青い薔薇って珍しいですよね!でも受付にあるだけで映えますね」 『はい…ありがとうございます』 何度も振り出しに戻る私達だけど… いつかまた、恋ができるのかな? 優先輩…。 『…では、私は失礼します』 「はい…っあ!!!」 『……え?』 「あ、あの……あの、」 『……はい』 「実は…最近ここ来る度に、ずっと気になってたんですけど…っ、あの、こんな事言うのもアレなんですけど」 『…っはい』 「いやっ、ナンパとかじゃないんですけど!!本当に気になって!」 『……っはい』 やっぱり、好きでした。優先輩。 「僕達…前にどこかでお会いしませんでしたか?」 一fin?一
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