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午前6時15分。結局、あのまま蓮の家に泊まってしまった。私が帰った後に呼ぶはずだった女の子は、蓮が土壇場で家に帰したらしい。
「ごめん、やっぱ今日いいわ、帰って」
「え……」
「また連絡するから。その時は今日の分まで遊んであげるよ、ね?」
「!!うん、分かった…!」
昨日の夜、そんな会話が玄関の向こうから聞こえてきたし。
こんな酷い扱いしてるのに、女が途切れないからイケメンって怖い。
寝ぼけながらそう考えていると、突然鳴り出した携帯のアラーム音に肩が跳ね上がった。そのままだるい体を持ち上げる。
『……はぁ、ねむ』
「おはよー」
『おはよ。また蓮君のせいで寝不足』
「えへ、ごめんね?だって亜緒ちゃんとするの好きなんだもんー。ほら、俺ら相性いいから」
『まあ、体の相性はね』
「今日はどうする?仕事の後来る?」
『いや、体持たないわ。家帰るよ』
「ちぇー」
『また連絡するね』
シャワーを借りて、パパっとメイクを終わらせる。服は蓮の家に置き去りだった物があったから何とかなった。
『これ洗っといて?』
「はいはい、てか何これ(笑)もう俺らカップル通り越して夫婦?」
『冗談でも笑えなーい』
「冗談でーす」
蓮を都合よく使ってるのは、自分でも分かってるけどそれはお互い様だし。
夫婦…かぁ。私が結婚…する日は来るのかな。いやいや恋人も作ろうとしてないのに何考えてんの。そんなこと考えるだけ無駄だ。
『じゃあ、またね』
「うん、行ってらっしゃい〜」
『行ってきまーす』
蓮の家を出て、最寄りの駅に向かった。私は、美容機器メーカー、株式会社アイピックスで受付嬢をやっている。
高校を卒業してすぐ就職して、10代のうちから仕事を始めたからか、初めは失敗ばかりだったけど、もう23歳の今で完璧に受付嬢としての仕事をこなしていた。
『おはようございます』
「おはよー」
「あ、亜緒おはよ!」
『優実〜おはよ』
ロッカールームに荷物を置きに行くと、同僚の優実が既に着替え始めていた。
優実とはこの会社の面接で出会った。何でも話せる頼もしい同僚だ。
「あー…?もしかして、泊まり?」
『えっなんで分かるの?』
「いつも髪巻いてるのに、泊まった次の日はストレートで来るから(笑)」
『こわっ探偵ですか?』
「あんたが分かりやすいのよ」
『今度から、蓮の家にコテ置いとこ』
「うわ、迷惑な女ー。てか、もうやってることカップルだよね。付き合うことはないの?」
『はいー?ないない!それじゃ意味ないじゃん。傷つく心配ないし、縛られない、この関係が1番楽なのよ』
そう話しながらシャツに腕を通した私を、優実は呆れた顔で見据える。
セフレがいることも、昔の話も優実には色々話してるからこんな会話も日常茶飯事。
『優実こそ、昨日はまたクラブ?』
「おっ、よく分かってるね〜明け方まで踊ってたよ」
『コンシーラーもっと塗ったら?』
「クマやばい?」
『うん、やばい』
「くっそー、結構塗ったのになー」
『よく飽きないね(笑)遊びすぎー』
「それはお互い様ー」
私に呆れたような顔してた優実も、私と同じく、彼氏を作らずにクラブでよく遊び明かしている。
私みたいにセフレはいないけど、クラブでいい男と出会ったらワンナイトって感じらしい。
彼氏がいらない訳じゃないけど、今は楽しいからそれでいいんだって。
「ね、ね、今日の夜さ亜緒も行かない?」
『どこに?』
「クラブに決まってるじゃん」
『えーなんか疲れそう』
「そんなことないよ!楽しいよ!男と絡まなくても、女だけで飲んで踊るだけでもいいんだから!行ったことないでしょ?」
『うーん、まぁ行ったことはないけど』
「明日、仕事休みだし今日の夜行こうよー。たまにはいつもと違う世界見るのも気分転換になるよ」
『まぁ、確かにねー』
2人とも着替えが終わって、鏡の前で髪を整える。確かに、クラブって行ったことないしたまにはそういうのもアリかも。そんな所行けるのも若いうちだしな。
少し体だるいけど、明日休みだし何とか大丈夫でしょ。
『じゃあ、ちょっと行ってみようかな』
「やったー!決まり!よし、定時まで頑張るぞー!」
『喜びすぎ(笑)』
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