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先輩が…?うそ…。
「あ、亜緖いた!日誌取りに来たの?私も来ちゃっ…」
『ゆ、優実!!』
「わっ!なに、どうしたの?」
『ど、どうしよう、先輩が…先輩が…っ』
携帯がするりと手から滑り抜けて、床に音を立てて落ちる。そのタイミングで、オフィスに入ってきた優実に思い切りしがみついた。
頭がパニックになって、足が動かない。
『先輩が…っ、行かない、と…』
「亜緖!落ち着いて!どうしたの!?先輩に何かあったの?」
『う…っどうしよう、先輩が…容態が急変したって…っ、病院から…すぐ来てって…』
「!!!えっ」
優実は、私の肩を支えてゆっくり立ち上がらせてくれた。そして涙でぐちゃぐちゃになった目元を拭い、私に目を合わせる。
心配そうに、だけど力強く、私にしっかりしろと言わんばかりの目線が刺さる。
「亜緖、すぐ行きな?こっちは私が何とかするし、上司にも言っとくから」
『………っう』
「ほら、しっかり!歩ける?大丈夫だから。すぐ行ってあげて。でも焦って怪我しないようにね?」
『…っうん、優実。ありがとう、』
「いいから気にすんな!この花束、亜緖のなの?これも私がロッカールームに持って行ってあげるから。早く行っておいで」
『…うん!ごめんね』
優実に背中をさすられて、何とか気持ちを保つことが出来た。それでもまだ胸の動機は治まらない。
でも、早く行かないと。先輩のところに…。
『ごめん…っ、行ってくるっ』
「うん!気をつけてね」
私は優実に背を向けて走り出した。オフィスから出て、出口まで勢いよく駆け抜ける。無我夢中で…オフィス街を走り続けて、病院へと向かった。
手に握りしめている携帯がまた振動しないようにと願いながら…。
『…っはぁ、はぁ』
先輩、どうか…無事でいて…
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