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初めこそ敵愾心が湧いていたものの、威風堂々とした態度の右衛門佐局が近付いて来るにつれ、
大江も丹波も抗う事の出来ない現実をまざまざと感じ、気付けば廊下の端に下がって、頭を垂れていた。
右衛門佐局はそんな二人の前で立ち止まると
「大江どん、丹波どん。ご機嫌よう──」
と静かな面持ちで声をかけた。
「……」
二人は悔しげな表情を浮かべながら、下を向いて押し黙っていたが
「下臈さん方、中臈・右衛門佐さんのお声掛けにござますえ」
と、いおが余裕たっぷりに告げると、大江と丹波は渋々顔を上げた。
「……ご機嫌よう」
「…ご機嫌よう、佐さん…」
二人の頭がまた静かに下がると、右衛門佐局は毅然とした態度で、再び廊下を進み始めた。
いおも “ ふふん ” と鼻先で笑いながら、二人の前を悠々と通り過ぎる、そのすがら
「─!」
大江と丹波の足をギュッ、ギュッと踏んでやったのである。
「…そ、そもじ!」
「こりゃ、待ちゃ!」
顔を赤くして叫ぶ二人を尻目に、いおは軽く舌を出しながら、右衛門佐局に続いて去って行くのであった。
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