塩田玲乃の証言

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塩田玲乃の証言

 私が刺されたのは、娘を小学校まで迎えに行ったときのことでした。  娘の学校が終わった後は、いつも車で迎えに行っていたんです。その日も学校近くのスーパーの駐車場で娘を待っていました。娘が来てから、荷物を預かって荷台に乗せるために一旦車を出たんです。その時、近くに女の人が立っているのに気付きました。くたびれた服を着ていて、髪の毛も整えていなかったので、なんだか不気味だなあと思いながら荷台を開けたんです。そしたらその女の人が急に奇声を上げて、包丁を振り上げてきて……  ……そこから先のことはあまり覚えていません。ただ、娘がそばにいたので、危ないと思って咄嗟に覆いかぶさった記憶があります。それからのことは周りから聞いた話でしか覚えていないですね。あの女は何度か私を刺した後、スーパーの店員さんに取り押さえられたとか。娘のお友達が助けを呼んでくれたみたいです。  後から犯人の名前を聞いて知ったんですけど、中学校時代の同級生だったみたいですね。しかも1年生の頃の友達でした。あんまりにも変わっていて気付かなかったんですが。心当たりは……特にないですね。その子、途中から急に学校に来なくなったので、疎遠だったんですが。それまではけっこう仲良かったと思うんですよ。  でも理由が何なのかは分からないですけれど、あの女のことを思い出すと怒りが湧きますし、許せないですね。私が刺されたからというのはもちろんですけど、娘がいるときを狙うなんて卑劣じゃないですか。  犯人もいつか刑期が終わったら外に出てくるんでしょう? あんな人間、世間に出すべきじゃないと思いますね。  事件を思い出すので引っ越しました。娘にとってもトラウマになったようで、未だに夜は泣きながら飛び起きるんです。体の傷は治っても、心の傷は消えないんですよ。
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