手を伸ばせばあの頃の花

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 小学校に入ってからもしばらくは、私はあまり変わらなかった。  現在四十代後半の私が小学一年生の頃というと、年号は昭和の、のんびりした時代である。  この時代でも、都会のほうでは小学生の集団登下校をしていたようだが、私が住む田舎にはそんなものもなく、学校の帰りは仲のいい友達と、自由に遊びながら帰っていた。  ただ、事前に各家庭から小学校に申請している「通学路」というものは存在しており、毎日その道を通って登下校しなければいけないと言われていた。  しかし、相変わらず自分の気の向くままに行動していた私は、小学校に入学して一月経たないうちに、この決まりを破った。  友達と一緒の帰り道で、通学路がどこまでも一緒である訳がない。  私は直進するはずの角を、一緒に帰っていたミナコちゃんの通学路に合わせて曲がって帰り、それをユリちゃんとノゾミちゃんに見られた。
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