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『掠奪された7人の花嫁』(原題:Seven Brides for Seven Brothers)1954年
ひどい邦題だ。直訳すれば「7人の花嫁は7人の兄弟に」なのに。
実は、この作品は低予算のビンボー映画だった。ジーン・パウエルとハワード・キールは初主演、兄弟たちは・・・ミュージカルの経験が無いやつらばかり。本業がスタントマンなんてのもいた。
同時期、大作ミュージカルの制作が進行していて、そっちに良いダンサーや歌手が集められていた。
しかし、そこはベテランの監督スタンリー・ドーネンが知恵を発揮する。
村の祭りは、下手なダンサーを演出でやり繰り。華麗な個人技に頼らず、泥臭いステップとアクロバティックな演技で、むしろ村祭らしい雰囲気を作り上げた。
狭いスタジオしか使えなかったので、ちょっとカメラのアングルが変わると、背景の書き割りがモロバレになる。気付かないふりで見てあげよう。
冬、ミリーが子供を産む。白雪姫が現れて、物語はハッピーエンドへ。
公開すれば、大作を蹴っ飛ばして大ヒット。
ワイドスクリーンの時代になり、ミュージカルは俳優の個人技より、シナリオと監督の演出が物を言うようになっていた。
『椿三十郎』1962年
黒沢明が「白雪姫と7人の小人」のモチーフに再チャレンジ。
主役は王子様ならぬ浪人の三船敏郎だ。汗臭そうな浪人が、白雪姫と7人の小人を助ける物語。あっ・・・白雪姫に魔法使いみたいなオバサンがくっついてるよ。女の演出が苦手なので、オバサンとの掛け合い漫才でごまかした。
ラスト、凶悪なマレフィセントと椿三十郎の決戦は有名だね。一撃でけりがつく、飛び散る血しぶきが・・・
『サウンド・オブ・ミュージック』(原題: The Sound of Music)1965年
修道院の規則にはまりきれない尼僧マリアは、トランプ大佐の家へ家庭教師として出向く。大佐には7人の子供たちがいた。
白雪姫が大人になったけど、7人の小人が見てわかる子供たち。とても愛らしい。
ロケを多用した大作映画である。
主演のジュリー・アンドリュースはイギリスの舞台女優だった。ニューヨークで『マイ・フェア・レディ』が舞台上演されるので、イライザを演じるために渡米した。ロンドンの下町言葉と貴族言葉の両方を操れる女優が必要とされたのだ。
舞台がヒットして、映画が作られたと知り、自分が呼ばれずに愕然とした。しかも、主演のオードリー・ヘップバーンの歌は吹き替えだ! 実は、下町言葉の歌ではヘップバーンが自ら歌っている、たいして上手くないけど。
わたしの舞台を汚した、と怒ったアンドリュースは決然として映画界に進出した。
史実のトランプ家は列車と船を乗り継ぎ、アメリカに移民を果たしている。歩いて山は越えなかった。その辺を描いた映画もあるぞ。
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