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「……なんか、お前って縁に巡り会えて良かったわ」
しみじみと、まるで目の前に広がる静かになった空間に存在する水蒸気の粒へ溶かしこむかのように、翔がつぶやいた。
「何よ、急に」
「いや、なんとなく。なんか、お前への友情? っていうかむしろ友愛? ……がいい感じに俺のことを中和してくれるなって、いま猛烈に思って」
「ふーん。そっかそっかぁ~」
翔の言葉に優は、肯定でも否定でも、感謝でも怨嗟でもない返事で応える。
「おまえなぁ。そんな中間的な返事じゃなくて、ちょっとはわかりやすい反応返せよ。言ってる俺がどんどん恥ずかしくなってくるじゃん」
「ふっ、ごめんごめん。んー。まそうだね。私もあんたたちと同じ、かな」
「なんだそれ。ま、いいけど」
互いに小さく笑い合ってから、その場の湿気を調整するような力強い声音で翔が続ける。
「いつか、俺もお前も、報われるといいな」
「親愛に溶けた私の熱量、すごいんだから。見てなさいよ?」
翔へと言葉を返す優の顔には、星依への愛しさを隠すことのないしっとりと落ち着いた微笑みがあふれていた。
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