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3.純粋さへの憧れだとか内に秘めた脆さとか
駅前のファミリーレストランの一角で、石(いし)灰(ばい)星依(せい)、雪(せつ)財(ざい)優(ゆう)、刈(かる)佐(さ)依(い)都(と)、そして石(いし)灰(ばい)翔(しよう)の四人は参考書やノートやらを広げていた。高校一年で同じクラスだったことをきっかけに始まったこのテスト前の勉強会だが、文理選択でクラスが分かれた今でも四人は当たり前のように集まっていた。
「なぁ依都、ここのところの反応式の問題なんだけど……」
翔が化学の問題集を指さしながら依都へ話しかけた。理系クラスであるC組の依都と翔はそれぞれ数学と化学の問題に取り組んでいる。
「……――あぁ、そこだったら……水酸化カルシウムからの矢印をたどっていくと、ここに炭酸カルシウム、ここに酸化カルシウムが入って……こっちの矢印には塩酸って書いてあるから最後のここは塩化カルシウムだね」
翔の手元を隣からのぞき込みながら、依都はさらさらと答えていった。
「あぁ、なるほどな。ってことは、こことここの矢印に入るのは二酸化炭素と水か」
依都からのアドバイスを元に、翔が続きを埋めていく。そんなやりとりをする二人を依都の向かいから星依が眺めていた。少し早めに区切りをつけた文系クラスであるA組の星依と優はすでに休憩に入っていた。
「翔くん、よくそんな複雑そうな問題解いてるね」
翔のノートへちらりと目をやりケーキの最後の一口を食べ終えた星依が声をかけた。
「あー、まあ、見た目はあれだけど……。分かってくると相関図みたいで楽しいぜ? なぁ依都」
「うん、そうだね。関係性が理解できてくるとなおさら面白くなってくる、と思う」
依都と翔の言葉に、いまいち納得しきれていない顔で星依が「ふ~ん」と返した。
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