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あたたかな日差しの中、男は草原の木陰に寝転がり、揺れる葉の隙間から青空を眺めていた。
「ああなんて綺麗な空だ」
男はそっと目を閉じ眠りについた。
そして男が目覚めるとそこには泥を塗りたくったような淀んだ空があった。
「ああ、またか」
男はベタベタとしたオイルにまみれたアスファルトから身体をはがすと立ち上がった。
辺りを見渡すと辺り一面工場が乱立して大量のどす黒い煙を吐き出している。
「また、この夢か」
男は知っている、この胸糞悪い光景が夢であることを。そして眠ればすぐに現実世界に戻れることを。
男は毎日この夢を見る。そして目が覚めるまでこの奇妙で怪しげな夢の中を探索するのが男の楽しみでもある。
道の端には黒く変色した死体やドロドロとした液体がそこかしこにある。
しばらく歩くと不気味な賑わいを見せる市場のような場所がある、そこでは腐臭を放つ食べ物や濁った水、用途がわからない機械の部品、その他色々な物が売っている。
そしてこの市場を抜けた先にある商店に毎度立ち寄るのだ。
カラン・・・コロン・・・
商店の扉を開けるとパイプチャイムが心地よい音を立てる。すると奥から図体の大きい汚れた老人が姿を現した。
「ゲバイト、今日も来たのか」
「ああ、どんな事でもやる。だから頼むラムド」
「またあの粉か?お前これ以上やるのは危険だ。死ぬぞ」
老人の名前はラムドこの店の店主でありどんな者にも仕事を与える、そしてその仕事量に応じた品物を交換してくれる。
「大丈夫だ、ここは夢の中。あれがあればいつでも現実世界に戻れる」
「・・・じゃあ今日は港から燃料を6こ運んで来てくれ。それと、ましな果物一個を交換だ」
「だから違う!!あの粉のやつだ。あれのためなら何でもするって!」
それを聞いたラムドはカウンターの下から布に包まれた何かを取り出しカウンターに置いた。
ゲバイトがその布を取るとそこにはリボルバー式拳銃があった。ゲバイトは初めてこんな近くで銃を見た、驚いた表情をしながら銃を見つめる。
ラムドは冷蔵庫からペットボトルを取り出し蓋を開け透明な液体を飲むと紙をカウンターにそっと置いた。
そこには人の名前とその人物に関する様々な情報が書かれていた。
ラムドは背中を見せながら一言。
「やれ・・・」
ゲバイトの呼吸は荒くなり全身が震える。唾を飲むと震える拳を固く握る、そして銃に手を掛けた。
それを勢いよく懐にしまうと紙を取り鬼のような顔でニヤリと笑うと店をあとにした。
「死んだほうがいい」
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