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「ナタリア」
「……ん?」
「話したい事がある。」
馬車の中で3人が真剣な顔をしてる。
「どうぞ。」
いい話だとは思えないけれど。
「…ナタリア、昔の話をする。君がこの国へ来るまでの話だ。」
「…意味が解らないわ。」
「ナタリアの本名は、『ナタリアーナ・アイ・ミーア』ミーア皇国の皇女なんだ。」
「まさか、魔女の次は皇女だと言ってくるなんてね。皇国の姫が何故私になるのよ。それに、そんな国は聞いた事がないわ。存在しない国にそんなものがいるわけないでしょ。」
「……」
「……」
「……」
また3人とも同じ反応ね。
「城を憶えてないか?この国のような形ではなく、白くて青い屋根で少し横に広い。」
「知らないわ。もし知ってたとしても、何か教科書とかで見たのかもしれないわね。もう、いいかしら?」
真剣に何を話すかと思えば…。
「その城で君の家族は殺されたんだ。皆には虐殺城と呼ばれてる。パーティーをしてる最中にそこにいた人は全て殺された。だがナタリアーナだけは生き残った。」
「そう。それなら家族と一緒に殺された方がましだったのかもしれない。少なくとも1人で死ななくてすむしね…。」
「俺はナタリアーナを殺したりはしない!婚約者だったんだ。ずっと護ると誓ったんだ。」
「むりやり結婚しただけじゃない。もういいわ。もしそれが本当なら今日まで私が知らないはずない。」
おばあちゃんが何も話してくれないわけがないもの。
「…何度言っても、明日になれば忘れる。」
「忘れる?何それ、随分と残念な記憶力ね。」
「ナタリア、君は魔女なんかじゃないんだ。」
「ローブを見つけてないから?間違えないようにしないとね。じゃなきゃ天井の絵のようになるんじゃない?悪魔は誰に味方するのかしら。」
「……さっきの話、聞いてたのか?」
「さっき?」
また『間違えられない』…とか言ってたのかしら。
「もう聞きたくない、明日になれば忘れるならね。『家族を惨殺された可哀想な皇女は、婚約者に護ってもらえる。』そんな嘘はいらないのよ。」
「嘘じゃない!」
信じたいけれど怖い。裏切られるかもしれない。殺されるかもしれない。
「それが本当なら私を逃がして。魔女だから捕まえた。そうじゃないなら逃がして。そうすれば信じるわ。」
「ナタリアーナ、君は俺の妻だ。」
「私がナタリアーナなら、サインはナタリアとしか書いていない。成立していないわ。言う事を聞く必要は全くないのよ。」
「信じてくれ。」
「……」
鍵の開け方はさっき見たわ。
馬車のスピードが落ちた。今ならいける!
カチャン
「…っ!?」
「ラマナ、さよならよ。」
私はそこから飛び降りた。
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