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それから、リンゴ村には10日後についた。
もちろん私を探す姿絵もペタペタ貼ってある。村を見回る兵士もいるし、多分村人に扮している兵だっているはずね。
けど、的外れよ。私の家までの通常ルートを見張っていても、私は見つけられないわ。
隣の山から裏の畑まで歩いて行くからよ。獣道を通れば結構近いのよね。
朝日が昇るのと一緒に山に登って、裏の畑に着いたのは夕暮れ。
案山子にはローブが着せたままだった。
やっぱりみつからなかったのね。もしこのローブを見過ごしていたなら、探してる方は本物を見た事が無いって事だよね。
それなのに、このローブを持っていると魔女確定なの?
おかしな理論だよね。魔女のローブという事を知らない人が、それをどうやって魔女の物だと言えるのよ。
…みんなに解らなくても、きっとラマナなら解るのね。唯一の悪魔殺しの生き残りだもの。
ローブをどこかに棄ててしまおうかと思ったけど、これを見つけた時に一緒にあった手紙が気になるのよね。
『このローブを持って逃げろ』って書いてあった。
持っていれば何か得があるの?それとも一族が生きた証を後世に残したい…とか、そんなくだらない理由じゃないよね。命をかけて取りに来てるのに。
おばあちゃん…どうしてこれの事を教えてくれなかったんだろ…。知ってたらラマナに会ったりしなかったし、思い出も綺麗なままだったのに。
考えていると、ガサガサっと音がした。
見つかってしまったのかと焦ったけど、その音を立てたのは私のお友達だった。
友達と言っても、人間じゃない。ラマナがいなくなってから仲良くなった山犬のクロ。夜に見ると、闇に溶けて見えないくらい真っ黒。
ラマナと別れてからすぐに出会ったから、多分おじいちゃん。今日はちょっとよろよろしてる。何だかいつもと少し違う。
「どうしたの?」
「くぅぅん…」
「クロ…?」
撫でてあげるといつも喜ぶのに、今日はすり寄ってきてばっかり。
「どこか具合が悪いの?」
「クゥゥ……ン」
クロはフラフラしてその場に倒れた。
「クロ…どうしたの?」
嫌な予感がする…。当たってほしくない…。でも今自分でも思ったじゃない。『クロはおじいちゃんだ』って…。
頭を撫でてやると、嬉しそうな顔をしてる。
でも、どんどん息が弱くなってるのが解る。
「まって、クロ!いっちゃやだよ!1人にしないで!!」
「……」
「ねぇクロ、起きてよ…」
何度も何度も、頭も体も足もしっぽも撫でてみたけど、クロは目を覚まさなかった。
クロは私の大切なお友達。
ラマナがいなくなってから、話を聞いてもらった。お婆ちゃんが亡くなった日は、ずっと一緒にいてくれたわ。
いつも寂しい時に一緒にいてくれた。…そんな存在はもう私には誰1人いなくなった。
「クロ、今日までありがとう。頑張って、最期に私に会いに来てくれたんだよね。」
もう聞こえてないってわかってるけど、暫く話続けた。
涙は止まらないけれど、このままにしておく訳にもいかない。
クロを埋めよう。
土にかえって、この森の1つになるの。
案山子を潰してそれで穴を掘った。その間も涙はとまってくれなかった。
おばあちゃんもクロもいなくなった。
あとは私を殺しにくる幼馴染みしかいない。
私の両親って何処かにいるのかな。…昔の事は覚えてない。本当は棄てられた子なのかも。
さすがに真夜中の山道を歩けるほど慣れてないし、野宿ね。岩穴を見つけてるから、そこで火を起こして寝ればいい。何日かそこにいてどうするのか考えよう。畑から食べ物は持ってきたから、数日はここにいても大丈夫よ。
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