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新しい私
案山子からローブをとって、岩穴で3日。
その間にどうしようか考えたんだけど、船にのってシュタン王国へ行く事にしたわ。
お金は充分ある。向こうへ着いたら、どこか小さな町で落ち着いて暮らそう。
悪魔だとか魔女とか、そんなのきっとこの国だけの話よ。
化粧で別人のように変装して、堂々と兵士の横を通る。
少し歩いていると、あまりよろしくない声が聞こえてきた。
「気持ち悪いんだよ!」
「こっちくるな、化け物ー!」
3対1、情けないわね。何が化け物なんだか。
「お前なんか悪魔狩りにあえ!」
…最後の一言、聞き捨てならないわ。
「おい、そこのガキども。お前ら悪魔がどんなもんなのか見た事あんのか?ねぇだろ…、知らねぇくせに言ってんじゃねぇぞ。」
私がそう言うと、3人は凄い勢いで逃げていった。
本当に情けないわね。
「大丈夫か?」
「……はぃ」
この子にも怖がられてしまったわ。まぁ、喋り方も乱暴にしているし、仕方ないよね。
「何で『化けもんだ』なんて言われてたんだ?」
「…皮膚が蛇みたいだから。気持ち悪いって。」
ああ、この時期いつもサーカス団がくるから、そこで見せ物として扱われてるのかも…。
「ちょっとおいで。」
「…知らない人には付いていっちゃダメっていわれてる。」
それは、いい事だわ。しっかりした教育ね。
「じゃあ、その木陰においで。お姉さんが魔法をかけてあげる。」
「お姉さん?」
「うん、本当はお姉さん。おいで。」
私は女の子と一緒に木陰に座った。
「肌が蛇みたいって、少し皮膚が厚いのと、かさついてるからそう見えちゃうだけよ。嫌なら隠せばいい話よ。」
その子に化粧をしていくと、とても可愛い女の子だった。化粧といっても目や口に何かぬるような事はなくて、肌にクリームをぬって蛇のように見えるのを隠すようにお化粧をしただけ。
「うん、出来上がりよ。ほら。これを見て。」
鏡の中の自分を見て、女の子が笑顔になった。
「ね、隠せばいいの。肌が少し皆と違ってもあなたを大切にしてくれる人はいるのでしょう?」
「うん。」
「それは幸せな事よ。」
どんなに綺麗に着飾っても、お化粧をしても、どうしようも無い事ってあるよね。…私はラマナと幼馴染みには戻れないもの。
「じゃあ、お姉ちゃんは行くところがあるから。」
「またどこかで会える?」
私は首を横にふった。
「でも、会えたらいいね。」
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