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2日間、この町にいるのは無理かもしれない。
窓から外を覗くと、ここに来た時より確実に兵士が増えてるわ。
きっと、あの女騎士のせいね。
変装は得意だけど、大量に囲まれたら逃げるのが面倒だわ。
私は平均よりもかなり力が強い。怪力と言っていいかもしれない。
それに気がついたのは、ラマナがいなくなってからすぐ。
町に野犬がいて噛まれそうになっていた人がいたから、犬のお腹を蹴飛ばした。
蹴飛ばした犬は、壁にぶつかって即死だった。あの時、まだ8才だったわ。
自分がやった事が怖くて、お婆ちゃん泣きついたのよ。
ラマナには飛び付いたり、ギュッと手を握ったり、怒ってペチペチ叩いてもそんな事はなかったのに何で?…ってね。
年を重ねる毎に力は弱くなっていったけど、ここ最近またもとに戻っているのに気がついたのは、クロを埋める穴を掘っている時だった。穴を掘るのが異常に早かったから、おかしいと思ってたんだよね。
まぁ、案の定だったわ。
怪力のおかげで女騎士に捕まらなかったし、ありがたいけど。
けど、ラマナが側にいると弱くなる気がするわ。
ラマナが悪魔殺しの修行に行くまで、私は普通だったんだから。離れたから強くなったとしたら、ラマナの存在が私を弱くする。
これは推測だけど、間違ってないと思う。
けど、それじゃ説明出来ない事もあるよね。
ラマナが離れている間でも、私の力はどんどん弱くなったんだし…。それには理由があったのかしら。
突然、怪力に戻ってしまったのが何故なのかも解らないけど。
窓の外から鐘の音が聞こえる。
「マーカスサーカスを見においで~!今日から3日間だけだよ~!見ないと損だよ~!!」
そう言って、チケットを売り歩いてある男の子がいる。
…サーカス団なら、いろんな所へ巡業するよね。
もしかしたら、他国にも行くかもしれない。それなら国境を越えられる。サーカス団に加えて貰えれば、見つからずに移動できる可能性があるわ!
私は急いで外へ出て、サーカスのビラを1枚拾った。そこにはサーカスのテントの場所も書いてある。
団員に加えて貰えるかは解らないけど、とりあえず行ってみよう!
着いた先にあったのは、思った以上に大きなテントだった。ここにお客さんを集めてサーカスをするんだよね。
大きなサーカス団に、何の芸も出来ない私が入団するのは難しい。
けど、絶対に入団したい!
団長らしき人を探していると、後ろからギュッと抱き締められる…というか、羽交い締めにされた。
「お前、物取りか?」
ごつい腕に大きな体。
普通なら男でも逃げるのは難しいはず。でも私は怪力だから、そこから簡単に逃れることができた。
「俺、物取りじゃありません!暫くこのサーカス団に加えて欲しいんです!!」
そうは言っても、簡単には受け入れてもらえないよね。
「わかった。」
「ええっ!?いいんですか?」
「団長のところまでは連れてってやる。団長を納得させるんだな。全ては小僧、お前の実力次第だ。」
実力って何?
それは腕っぷし?
案内されたのはサーカスのテント内にある控え室?のような所。
「ほら。」
案内してくれた人は、私を置いてさっさといなくなってしまった。
「どうしました?」
「え…、あの、サーカス団に入れて欲しくて…」
何だか拍子抜けだわ。
団長っていうから、ゴツい人や怖い顔をした人を想像していたけど、色が白くて銀髪の綺麗な男性だった。
「君に何が出来るの?」
長めの前髪が瑠璃色の瞳を少し隠しているけれど、鋭い視線は感じる。
「力なら、このサーカス団の誰にも負けません。」
「…ん~、そういうのはいらないんだよ。既に怪力はいるし。」
「小道具作りでも、食事づくりでも、何でもいいのでお願いします!」
「……」
「……?」
物凄く見られてる気がするわ。
「君、本物の顔で会いに来てくれる?」
「っ!?」
変装が見破られた…。今日は結構自信があったのに。
街には私の姿絵が貼られている。見たら引き渡されるかもしれないよね。でも、そんな事は言ってられないわ。
もし引き渡された時は、兵士を倒して逃げ出そう。ラマナが私の側に現れる前なら何とかなるわよ!
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