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団長
「待て、そこの男!」
2人の横を通りすぎる時、私は女騎士に呼び止められた。
「あ?なんだよ姉ちゃん。」
女騎士の言葉に、ハルさんは顔をしかめている。
「お前じゃない、そこの小さいほうだ。」
「ってことは俺ですか?」
「お前、この前港で私と会っただろ。」
「どなたかとお間違えではないですか?俺は会ったことありません。」
まずい、ラマナがめちゃくちゃ私の事を見てる…。港での事は、この女騎士から聞いてるだろうし、怪しまれてるよね。
「…ナタリア?」
「俺はオリですが。」
面倒くさい事になってきた。どうやって乗り切ろうかな…。この女騎士、しつこいし…。
「ねぇ、悪魔殺し君。うちの団員に何かようかな?」
私が悩んでると、団長が笑顔で近付いてきた。
「これは魔…」
「『これ』…?うちの団員にそんな言葉を言えるほど、君は偉いの?女騎士さん。」
団長、怖…。
たぶん女騎士は、『これは魔女だ』って言いたかったんだよね。皆に聞かれる前に、団長が遮ってくれて良かった。
「何をっ…」
「止めろ、タナ。こちらが悪い。申し訳ない。引き留めてすまなかった。」
「いえ、早く悪魔とやらを殺せるといいですね。」
団長が言うと、団員がクスクス笑っている。
みんなハルさんが言うように、悪魔殺しなんて馬鹿みたいだって思ってるから笑ってるのよね。
「さぁ、お仕事中の悪魔殺し様の邪魔は出来ないから、俺達はさっさと行こうか。」
「ウィース」
「ハーイ!」
団長の言葉を聞いて、皆歩きだした。
「オリ、俺らもいくぞ。」
「はい!」
私はハルさんと一緒に歩きだした。
「悪魔殺し君、次間違えたらどうなるか、一族の血に聞いてみるといいよ。」
「っ!?」
「ナタリアーナに会ったらよろしくね。」
「……」
ハルさんと私は他の団員と一緒に進んでいたから、団長とラマナが何を話しているかは聞こえなかった。
けど、ラマナが凄く驚いてるように見えた。
話を終えた団長が、笑顔で私の横へ来た。
もしかして、出ていけって言われるのかしら。
「もし変な輩に絡まれたら、すぐに俺に言うんだよ。」
そう言って、私から離れていった。
団長、何で私の事を助けてくれたのかしら。邪魔になれば捨てるって言ってたのに。
・・・・
「ユリオ様、追わなくていいんですか?あの男、ナタリアーナ様を知ってるような口振りでしたよ。」
「いい、あれはサーカス団だ。巡業の場所さえ解れば、いつでも見つけられる。」
「そうですが…。」
「タナカ、とりあえずコーエンところへ帰るぞ。」
「はい。」
あの男は何者だ?サーカスの団長だというのは解るが、何故ナタリアーナの事を知ってるんだ。
それに…
『次間違えたらどうなるか、一族の血に聞くといい』…、この詳しい意味は解らない。だが、虐殺城の事も、その犯人が俺達の一族なのだという事も、あの男は知っているという事だ。
…あの男は俺の知らない事を知ってるのかもしれない。
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