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次の公演…
「遂に…でびゅーですか…」
「うん、もともとその役で雇ってるわけだしね。」
「かしこまりましたっ!!」
今日から猛獣使いのハルさんの横で頑張るのよ!!…ものっ凄く怖いけど、悪魔殺し達に殺されるくらいなら猛獣蹴飛ばす方が勝てそう…、多分ね。
猛獣っていうのは、虎という生き物。これが真正面から向かって来たら、蹴りようがないわ…。常に側面にいないと、ハルさんも私もあの世行き…。
「オリ、そんな固くなるな!そんな簡単には襲ってこねぇから、…たぶん。」
「『…たぶん』…は、言わないで欲しかったです。」
「危険と隣り合わせだからショーも盛り上がるってもんだ。俺達は重要な役割を担ってるんだぞ。」
「俺、一生ピエロでいいです。」
あれもかなり辛いけど、怖くはないもの。
「じゃ、連携を考えるぞ。」
「え?俺も何かするんですか!?」
「ボーッと突っ立てられると気が散るからな。助手はしてもらう、」
気が散るならいない方がいいんじゃないの?なんて言えないけどね。
結局、トラと共に火の輪の側まで歩く事になったんだけど…。メチャクチャ怖いわ。近くで見ると物凄く大きい。
何かあったらこれを蹴り飛ばすのよね。無理があると思うのだけど。やるって言っちゃったんだから、今更弱音は吐けないよね。
「ハーイ!!今日から猛獣使いハルの助手、オリがデビューしまぁ~す!」
司会役の女の子が、お客に聞こえるように大きな声で叫んだ。
「オリ、笑顔で手を振れ」
「はい…」
ハルさんに言われた通り、頑張って笑顔で手をふった。
それを見て、また女の子が続ける。
「なぁーんと、もしも猛獣が暴れだした時は、この助手のオリがぶっ飛ばします!!その姿を一度見てみたい!!と思いますが、そうなるとこのサーカスの売りが1つ減るので、残念ですが諦めてくださーい。」
女の子の言葉に
「蹴っ飛ばせー!」
「食われろー!」
と、あちこちから恐ろしい応援が…。
でも頑張るのよ!
この国を出るには働くしかないんだから!
・・・・
「団長も人が悪いですねぇ。あれ、本当は女の子でしょ。」
出番を待つ団員の1人がポソっと言った。
「うん。秘密にしておいてよ。危ない時は俺が何とかするしね。」
ちょっと戦いになれてもらわないと…。ラマナを殺す為に。
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