燃えないゴミ

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メアになって、はや1週間。 「そろそろ俺の相棒として働いて貰うぞ。」 「……」 「よろしくな、相棒。」 「あの街での恐怖が…」 「食われてないんだから、問題ない。」 そんな問題じゃないと思うわっ!! 「サーカスで働くには危険がつきものだ。志願してきたんだから、しっかり働けよ。オっ…メア」 ハルさん、また『オリ』って言いそうになってる。 「ショーで名前は間違えないで下さいね。」 「間違えない間違えない。多分…」 多分…。 サーカスって見てると楽しいけど、実際は命をかけたショーなのね。 「メア!いくぞ!」 「ハイッ!」 いつものようにトラを連れて出ていくのだけど、いつもと違う事が起こった。 何故かトラが私に甘えてくる!! 大きな猫みたい…何故かすり寄ってくるのよ。 サーカスの皆も、ハルさんでさえ驚いてる。 1番私が驚いてるけどね! 「は…は…ハ…ハルさん…怖いです」 いつ牙をむくか、爪をたてるかわからないわ。食べられたらどうしよう!! 「そこまで懐いてたら大丈夫だろ。今日はちょっとばかり趣向をかえる。」 「何をするんですか?」 「乗っかってみろ。トラに。」 何を言い出すの、この人!! 「死ねと同意じゃないですか!」 「駄目たったらいつものショーだ。ほら、やれ。」 駄目だった時、私は死んでるよね…。 私が乗ってもトラは怒らなかった。逆にピョンピョンと機嫌がよく見える…のは、気のせいかしら。 …その日のショーは私を乗せて火の輪くぐり!!お手とか…。その他もろもろ。 「ハァーハァー……」 生きた心地がしなかったわ。 「ハルさん…、明日からは普通に戻りますよね…」 「……」 無言… 「何で懐いてるんでしょうか?この前まで普通だったのに。」 「懐くっていうか、メアを主人だと思ってる。」 「主人…?」 「俺達はトラを嫌いじゃないし、仲間のような感覚で飼ってる。だがトラ自身は100%は納得していない。そんな中、メアはトラが認めたご主人様だ。」 認められても困るのよっ! 「メア、ちょっとおいで。」 「はい。」 団長に呼ばれたから行こうとしたんだけど、トラがくっついてくるんだよね。 何で檻に入ってないのよ! 「トラ君、ついてこなくていいよ…?」 そんな言葉は聞こえてなかったのか、涼しい顔をして私の服の裾をかじってそのまま団長のもとへ引きずっていく。 ズザザザ… 「……」 「……お待たせ…致しました」 私の横にちょこんと座るトラは、何だか自慢気な顔をしてるように見える…のは、気のせいかしら。 「メア、強いお友達が出来たね。」 団長に満面の笑みで言われた。 「…ソウデスネ」 団長なら何とかしてくれるんじゃないかと期待してた私が馬鹿だったわ…。
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