黒い瞳と薄紅色

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黒い瞳と薄紅色

「ラマナ?…何を言ってるか解らないわ。…一体どうしたの?」 トラ君が私の横で唸ってる。 「薄紅色の髪は悪魔殺しの証。」 「薄紅色?」 強い風が吹いてウィッグが飛ばされた。揺れる髪の色がいつもと違う。 「何これ…。何で髪の色が変わってるの…。」 一体何が起きてるの…。ここはどこなの? 檻は燃え尽きて、辺りに見える景色はさっきとは全く違う。まるで、夕暮れの荒野みたい。そばにいたはずの団員も誰もいない。 「悪魔殺しはラマナで、魔女の私を殺しに来たんでしょう?」 「いつまで忘れてるつもりだ。…いい加減思い出せ。ナタリアーっ!?」 私とラマナが話してる時、パシュっと音がした。 何が起こったのか全然わからない。でも何故かラマナの頬から血が垂れてるのが見える。 「団長…?」 いつの間にか、私を背にして団長が立っている。 どうやってここに来たの?今までいなかったよね…。 「トラ、ナタリアーナを護れ。」 グガァァア 団長の言葉を理解したみたいにトラ君が吠えた。 「ラマナ、『間違えるな』…と、ユリオ様もミリアーンも言っていたのに、残念だよ。」 「黙れ、裏切り者が…」 裏切り者? よく分からない。わからないけど、この状況は普通じゃない! 「……」 ラマナがボソボソと何か呟いた。すると真っ黒なトラ君みたい猛獣が地面から出てきた。 「団長っ!あれは何ですか!?」 その答えはかえってこないまま、団長が何故かカシュー君の名前をよんだ。 「カシュー」 「へーい」 カシュー君がいきなりポンっと現れた。 「カシューくんっ!?一体どこから…」 「説明は後でするって。」 「えっ?」 カシュー君にグイっと手を引っ張られたら、何故か焼ける前の檻に戻っていた。 「カシュー君、ラマナと団長はどこ!?」 「気にすんなって、すぐ戻ってくるから。」 「いや、気にするでしょ!」 「…トラ、面倒だからちょっと噛みついとけ。」 カシュー君が言うと、トラ君がカプカプとあま噛みしてきた。 「トラ君、今は非常事態だから、噛むのはやめようね……。」 全然言う事を聞かないわ!カシュー君や団長の言うことは聞いてたのに!! 「こら、どきな……っわ!?」 トラから逃げようワタワタしてると、目の前に突然団長が現れた。 「あ、ごめんごめん。大丈夫かい?」 「…はい。」 たった今までいなかったよね。…一体どこから?それにラマナは? 「ハァー、本当、面倒くさい男だ。」 「団長、死んでねぇの?アイツ。」 「女王の子供は、そんな簡単には死なないから。」 女王の子供? 「団長、…今のは何だったんですか?」 「魔法の1つでね。この場所じゃないどこかへ連れていかれたんだよ。」 「魔法…?悪魔殺しもそういうのが使えるんですか?」 「あれは悪魔殺しじゃないからね。本職だよ。魔女の女王の子…ラムネルア。…ナタリアーナ、君が護った男は悪魔の血に負ける。」 魔女の王の子?ラムネルア…? ナタリアーナ? 「ナタリアーナ…物凄く強い洗脳をかけてるんだね。何度名前を呼んでも記憶が出てこない。」 「でも、髪の毛ピンクだし、もうすぐ思い出すんじゃね?」 「…だといいけどね。」 「ってか、アイツなんで急に血に負けたんだ?」 「女王の遣いが近くにいる。」 「まじで?メンドクセぇ!」 2人の話の意味がわからず、ボーとしてる私をトラ君はカプカプ噛み続けてた。
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