黒い瞳と薄紅色

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「君はナタリアーナ、ミーア皇国の皇女だって憶えてない?」 「えっと…全くわかりません。そんな国、あるのも聞いた事がありません。」 魔女だとか皇女だとか…。 「私はナタリアでナタリアーナではありません。誰かと間違えてるんじゃ…」 「…そうだね、俺の勘違いだ。ここでは今日もメアだよ。」 「……ラマナが私を『悪魔殺しだ』って言ったんです。私は魔女じゃないんでしょうか?…ラマナは悪魔で団長が『裏切り者』って、どういう事ですか?」 質問すると団長はニコっと笑った。 「もう少ししてから話そうか。今日はトラと仲良く寝てなさい。」 「えっ!?何も解決してませんよっ!!」 カシュー君と団長は檻から出ていったのに、私だけトラ君に捕まったまま…。そして無情にも鍵が閉められた。 「トラ君、私に懐いてるんじゃなくて、色々邪魔してるんでしょ。」 「……」 トラ君はツンっとそっぽ向いてしまった。 「拗ねたの?」 「……」 全くこっちを見ないわ。トラも拗ねるの? 全然言うこときかないし、猛獣使い見習いとしても失格だわ。 「…トラ君…カプカプ噛まないのっ!」 私の注意も空しく、そのまま無視されて最終的に膝の上に乗られた。 「重いっ!!」 外からは喋り声や笑い声がするけど、私は檻の中。 結局、晩御飯まで檻の中でトラ君と過ごす事になった。 「美味しいっ!!」 「だろ?ここを通るときは、絶対にこの食堂によるんだ。」 「ハルさん、この食べ物は何ですか?」 「貝だ。」 「貝にも色々あるんですね。この前食べたのと違いますよね。」 「…メア、お前はうちに来るまでどうやって暮らしてたんだ…。食べ物もあまり知らないだろ。」 料理はお婆ちゃん任せだったし…。何を使ってるかなんて考えなかった。貝なんて出てたのかな…? 美味しいものは沢山あって、楽しいことも沢山ある。優しい人だって沢山いる。 私の小さな世界には、おばあちゃんとラマナと犬のクロしかいなかったけど、これから楽しい世界を見つけれれる。 けど、そこにラマナはいない。殺しに来るなら、応戦しないと殺されるんだ。 私が悪魔殺しって、どういう事なの。魔女と正反対よね。 ローブは魔女じゃない者に手に入らないから、魔女の証だよね。 それがラマナの物?では、なぜ私が持ってるの…。
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