42人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「トラ、早く行け!!」
「分かったのだ!!」
トラ君に抱っこされて、サーカス団へは10秒ほどで帰れた。
「団長っ!カシューが危ないのだ!!」
「……トラ、こっちおいで。」
「…?何なのだ?」
「なるほど。」
団長がトラの頭を撫でると、一瞬でいなくなった。
「…!?」
「団長に置いてきぼりにされたのだ。」
「そういう問題じゃな…っ!?」
トラとこれだけしか話してないのに、もう団長が帰ってきた。
「カシュー君っ!!」
「カシューっ!!」
団長の腕の中には、ぐったりとして血まみれのカシュー君がいる。
「メア、ちょっと俺の手を握ってくれる?」
「はい!!」
…一体何があったの?
どうしてこんな事になるの。ラマナがカシュー君を殺す理由なんて無いよね。私を庇う人は、問答無用で殺すつもりなの…?
「ぅぅ…」
「カシュー、起きるのだ!!」
「カシュー君!!」
どうしよう、何かに切り裂かれたみたいな傷が体中にある。出血が酷い。早く手当てしないと死んでしまう!
「大丈夫だよ。メアの力を少しわけてもらったから、すぐ回復する。」
「私の力?」
私がカシュー君に分けられる物なんてあるの?
「ナタリアは、ナタリアーナで悪魔殺しで今はメアなのだ。本当は強いのだ。力があるのだ。」
それはトラ君が前にも私に言ってた。
私が強いかどうかは解らないけど、カシュー君が治るならなんだっていい!
「……これは…ラマナが?」
カシュー君の状態を見て、私は愕然とした。さっきは血ばかりに目がいってよく見えてなかったけど、かなり深い傷がいくつもある。
「そうだね。さすが女王の子だよ。カシューは一発で死ぬところだ。メア、君がずっとそばにいたから、カシューの力も上がってたし、女王の子の力は薄まってた。だから生きていられた。そうじゃなければ、跡形もないよ。」
「あの男は嫌いなのだ!」
そんな事するような人じゃない。そう言いたいけれど、現実を見てしまえばもう言い訳も弁護も出来ない。
私が魔女なのだとしても、ラマナが悪魔なのだとしても、もう敵でしかない。
カシュー君と私が一緒にいたのは見ていたのに、私の友達だって解ってて攻撃したんだから。
もう迷わない。団員に手をかけるなら、悪魔殺し集団もそれなりに報いは受けてもらう。
ラマナ、私だけならいい。逃げるだけで、それでよかったのに。
私の大切にしてる物を壊し始めた。
もう、『魔女とか馬鹿みたい』って、笑い事では済まない。
私とラマナは再開しなければよかったのにね。
あのローブを見つけなかったらよかったのにね。
でも、もう遅いよ。
薄紅色の魔力というもので、ローブを着て戦う。魔女の証は私が責任をもって燃やす。
ラマナ、これで本当にさよならよ。
最初のコメントを投稿しよう!