なのだ

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「トラ、早く行け!!」 「分かったのだ!!」 トラ君に抱っこされて、サーカス団へは10秒ほどで帰れた。 「団長っ!カシューが危ないのだ!!」 「……トラ、こっちおいで。」 「…?何なのだ?」 「なるほど。」 団長がトラの頭を撫でると、一瞬でいなくなった。 「…!?」 「団長に置いてきぼりにされたのだ。」 「そういう問題じゃな…っ!?」 トラとこれだけしか話してないのに、もう団長が帰ってきた。 「カシュー君っ!!」 「カシューっ!!」 団長の腕の中には、ぐったりとして血まみれのカシュー君がいる。 「メア、ちょっと俺の手を握ってくれる?」 「はい!!」 …一体何があったの? どうしてこんな事になるの。ラマナがカシュー君を殺す理由なんて無いよね。私を庇う人は、問答無用で殺すつもりなの…? 「ぅぅ…」 「カシュー、起きるのだ!!」 「カシュー君!!」 どうしよう、何かに切り裂かれたみたいな傷が体中にある。出血が酷い。早く手当てしないと死んでしまう! 「大丈夫だよ。メアの力を少しわけてもらったから、すぐ回復する。」 「私の力?」 私がカシュー君に分けられる物なんてあるの? 「ナタリアは、ナタリアーナで悪魔殺しで今はメアなのだ。本当は強いのだ。力があるのだ。」 それはトラ君が前にも私に言ってた。 私が強いかどうかは解らないけど、カシュー君が治るならなんだっていい! 「……これは…ラマナが?」 カシュー君の状態を見て、私は愕然とした。さっきは血ばかりに目がいってよく見えてなかったけど、かなり深い傷がいくつもある。 「そうだね。さすが女王の子だよ。カシューは一発で死ぬところだ。メア、君がずっとそばにいたから、カシューの力も上がってたし、女王の子の力は薄まってた。だから生きていられた。そうじゃなければ、跡形もないよ。」 「あの男は嫌いなのだ!」 そんな事するような人じゃない。そう言いたいけれど、現実を見てしまえばもう言い訳も弁護も出来ない。 私が魔女なのだとしても、ラマナが悪魔なのだとしても、もう敵でしかない。 カシュー君と私が一緒にいたのは見ていたのに、私の友達だって解ってて攻撃したんだから。 もう迷わない。団員に手をかけるなら、悪魔殺し集団もそれなりに報いは受けてもらう。 ラマナ、私だけならいい。逃げるだけで、それでよかったのに。 私の大切にしてる物を壊し始めた。 もう、『魔女とか馬鹿みたい』って、笑い事では済まない。 私とラマナは再開しなければよかったのにね。 あのローブを見つけなかったらよかったのにね。 でも、もう遅いよ。 薄紅色の魔力というもので、ローブを着て戦う。魔女の証は私が責任をもって燃やす。 ラマナ、これで本当にさよならよ。
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