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緑の男
「カシュー、おやつなのだ。」
「いらねぇよ。」
「お肉美味しいのだ。」
「俺は今弱ってるから、そんなモンは食えない。てかそれ、おやつじゃねぇし。」
「じゃあ、いつ食えるのだ?」
「…3日後くらいだな。」
「わかったのだ。」
コクコクと頷いて、トラ君が私の傍に帰ってきた。
トラ君は、カシュー君と私を行ったり来たりしている。
「団長、私は薄紅色に見えるんですか?」
「うん。普通にしていればそんな事はないんだけど、何かに過敏に反応すると魔力がある者には薄紅色のオーラが見える。」
「オーラ?」
「うん。どんな風に見えるか…、簡単にいうとメアを囲む空気が魔力を含んで薄紅色に見える。魔力が強くなれば体にも変化が出てくるよ。髪の毛が薄紅色になったりね。」
「髪の毛…」
そういえば、ラマナに会った時に変な色に変わってたわ。
「ラマナがいたら、そうなってしまいますよね?」
「間違いなくそうなるだろうね。それを抑えないと、これからはメイクだけでは何とかならない時があるかもしれない。女王の使いがいるから。」
「女王の使い…?」
「そうだね、緑色とだけ言っておくよ。ラマナに近づいてるのは『幻を見せる男』だから。」
「幻…。団長、私はそれにあった事があるかもしれません。」
「…どこで?」
「トラ君が私は『忘れんぼ』だっていうんです。でも、トラ君と一緒にいると、そんな事があったのかもしれないって思う時があるんです。トラ君は私の記憶を見ているようなので。ねぇ?トラ君。」
私の横に座ってお肉を食べているトラ君に話をふってみた。
「覚えてるのだ。メアを船に乗せたやつなのだ。」
トラ君のことばに団長が眉をひそめた。
「船?」
「本当に乗ってたわけじゃないのだ。ただ、メアはとてもきれいな宴の中にいて、そこでいっぱい人が死んだのを見たのだ。」
「どんな宴?」
「メアが小さな時に見てるのと同じようなものだったのだ。黒い影が沢山いたのだ。」
「そう。トラは偉いね。これからメアの事はトラに聞くことにしよう。」
「いつでも教えるのだ。」
団長に頼りにされたのが嬉しかったのか、トラ君は胸を張っている。
「トラ君。一応私の思い出だから、勝手に言わないでね。」
「わかったのだ。」
本当かな…。『メアの為だよ。』って団長に言われたら『おしえるのだ!』とか言いそうだよね。
「今のメアの姿もバレてしまったね。また違う変装するのは構わないけど、その度に名前が変わるのは面倒だし『メア』にしておこう。」
「ナタリアはナタリアーナで悪魔殺しでメアなのだ。でも、そのうちナタリアーナになるのだ。」
「……」
よくわからないけど、ナタリアーナになるのだ。
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