緑の男

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カシュー君が元気になった次の日からサーカスが始まる。 「トラ君は今日は獣のトラだからね。ハルさんの言う事を聞かないと駄目だよ。」 「今日もメアを背中に乗せるのだ!」 「それは止めようね。」 「どうしてなのだ?」 だって、私をのせたまま火の輪潜りとかするんだよ…。そんなの怖くて耐えられないよ! 何をするのか、とりあえず確認に行かなきゃ! 「ハルさん!今日はいつもと同じですよね?私にトラに乗れとか言わないですよね?」 お願いだから言わないで! 「団長が、メアと仲良しな『なのだ』を見せるって言うから、何をするのか団長しだいだな。」 「なのだ?」 「トラだよ、小僧の方の。獣のトラとごっちゃになるし、トラは『なのだ』って呼ぶことにした。」 獣も人間も、どちらも同じトラ君なんだけど、ハルさんは知らないから仕方ないよね。けど、『なのだ』って…。もう少し可愛い名前をつけてあげて欲しいわ。 それにしても、一体何をさせられるのかしら。私はまだ猛獣使いの見習い。いくらトラ君が人間になれるとしても、それとこれとは話は別だよね。 「団長!」 「演目を変える気はないよ。これは団長命令。」 「……かしこまりました。」 私が『無理だ』って言うのを遮るように、先に命令されてしまった。 仕方がない! 私は雇われの身、これは仕事!我儘言っては駄目よ! 「私はトラ君と何をすればいいですか?」 「カシューとトラと一緒に空中ブランコだよ。」 空中ブランコっ!? 「団長、私を殺すつもりですか?力はあっても、運動神経がそこまでいいかといえば別問題ですよ。空中ブランコって、そんなの誰でも出来る芸当じゃないですよ!」 「悪魔殺しから逃げる時、メアはどうやって逃げたの?」 「カシュー君に抱えられて…。まさかカシューくんに抱えられてブランコに乗るんですか?」 「うん、そして最後は猛獣に戻ったトラとハルとメアの3人で猛獣ショーだよ。」 「私、出世しすぎてませんか?」 出世っていうか、いいように使われている気がするけど…。 「メアを狙いに来る者がいるかもしれないから、安全のためにトラかカシューの傍に居てほしいのが本音だよ。」 「それは、ラマナが来る可能性があるという事でしょうか?」 「いや、本人じゃなく、来るなら悪魔だよ。」 「悪魔…」 「おそらく、トラの記憶にある『緑の男』だろうね。強いよ、あれは。今の女王の息子を悪魔に戻そうとしてるのは、緑の男だからね。」 「それがいなくなれば、ラマナは悪魔にはならないんですか?」 「いや、もう遅い。汚染され始めてる。止められない。」 「汚染?」 「そうだよ。どれだけメアに言っても覚えてないし覚えないけど、本物を見てわかっただろう?あれが本来の姿なんだ。」 「……」 「トラがいるとどんどん過去を思い出してるみたいだし、いい傾向だよ。」 いつの間にか私の側に来ていたトラ君が、話に割って入ってきた。 「緑の男は、船の時はあまり力がなかったのだ。ラマナに会って強くなってるのだ。幻の中で生き物を殺せる力がある男なのだ。」 「トラ君は詳しいね。」 「これはメアの記憶なのだ。」 「そっか。」 「オレはメアが強くなると最強の猛獣になるのだ。緑も倒せるのだ!カシューよりすごいのだ!」
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