緑の男

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「さぁ、サーカスが始まるから話は終了だよ。」 「解ったのだ。」 「メア、カシューとトラ信じなさい。」 「はい。」 2人の事は信用してるわ。 ただ、ブランコは怖いのよ…。なんて、今さら言えないけどね。 「よし!気持ち切り替えますっ!」 「うん、行こうか。」 「なのだっ!!」 私とトラ君がブランコのそばに行くと、カシュー君があからさまに嫌な顔をした。 「…メアとトラが一緒なのかよ。」 カシュー君も困るよね。2人も押し付けられたら。 「トラ、お前は自分で何とかしろ。俺はメアを抱える。」 「ずるいのだ。オレもメアと一緒がいいのだ。」 トラ君が『私と一緒がいい』と言って引かなかったので、結局カシュー君が私とトラ君を抱えてブランコに乗る事になった。 トラ君は肩車で私は横抱きにされている。これって大丈夫なの? ブランコって横の紐にまったく触らないで2人抱えて出来るものなの?…ううん、もう考えるの止めよう。 「いつも檻の中から見てただけだから、楽しみなのだ。」 トラ君は私と違ってとても嬉しそうだわ。 私が動物の姿になれる人間だったら、同じ様に怖くなくなるのかしら。 「…メアっ!?」 「ん?」 呼ばれて見上げてみると、カシュー君がとても大きく見える。なんで? 「おい!元に戻れ!!急に人が消えてネコになったら変に思われるだろ!!」 「ネコ?元って何の話…?」 「ネコになってんだよっ!!」 私は自分の手を見た。 薄紅色の毛に包まれていて、先端には爪と肉球が…。 「どうしてっ!!」 「知るかよっ!!とりあえず、これもショーだって事で乗り切るぞ。団員ですらびっくりしてるからな。後で団長に相談だ…」 「はい…」 カシュー君はゲッソリしてるけど、トラ君は全然気にしてない様子…。トラ君、少しくらい気にしようよ! ブランコが終わっても私は人間には戻れなくて、猛獣ショーに出る事も出来ずサーカスは終わった。 「団長、これ、どうしたらいい?」 カシュー君が、猫になった私を抱えて団長に相談している。 「メア、可愛い猫になったね。」 「そんな落ち着いてる場合じゃないですよ!!私はもとに戻れるんですか?」 「戻れるけど、俺には戻せないよ。」 「うそ…」 団長なら何とか出来るんじゃないかと思ってたのに。 「多分メアは、『カシューとトラの魔力』を自分の魔力にまぜたんだね。」 混ぜる? 「…よくわかりませんが、団長は色々出来るじゃないですか!これも何とかならないですか?」 「ならない。と言うか出来ない。」 終わったわ。私の人生は一生ネコなのよ。もう人生じゃなくなったわ。猫だもの。 「大丈夫なのだ。オレのちっちゃいやつなだけなのだ。」 何も大丈夫じゃないよ…。
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