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ネコと緑
ネコになって3日。
メアは体調不良で療養の為に一時サーカスを抜けている…という設定になった。
「ナタリアはナタリアーナで悪魔殺しでメアでネコなのだ。」
「増えただけじゃない。」
トラ君と話していると、カシュー君に注意された。
「喋るな。他の奴には『ニャーニャー』ないてるだけに聞こえてんだぞ。団長とトラと俺しか理解できてねぇんだから。おかしいと思われんだろ。」
「でも、ネコが寂しいのだ。」
まず私の名前が『ネコ』なのが寂しいわよ。
「…ネコ、ここから10キロくらい先に『緑色』が見えないか?」
「見えないのだ。」
「トラにはきいてねぇよ。」
「私も見えないけど、いるの?」
「多分いる。だから、団長のとこ行っとけ。」
「わかった。」
団長もわかってたみたいで、カシュー君から私を引き取りに来た。
緑色の男…。会ったら殺されるって言ってたよね。
「少し昔話をしようか。ナタリアーナ」
「はい。」
「返事はしなくてもいい。頭の中で話してくれれば聞こえるから。俺の言葉も聞こえるよ。」
「はい。」
「…ナタリア、君はナタリアーナ・アイ・ミーアという名前で、ミーア皇国の皇女だ。けれど君の両親もお兄さんも国民も、…殆んど殺された。その犯人が魔女や悪魔って言われる物だよ。」
「……」
「虐殺城…ハルが言ってたのを覚えてる?俺がその生き残りじゃないかって話。あれは間違ってはいないよ。大量殺戮があった血塗られたられた城。」
「団長もその国の人だったんですか?」
「ああ、俺はその虐殺の2日前にミリアの遣いで国をでてた。だから殺されてない。」
「ミリア…お婆ちゃん?」
「種明かしをしようか。俺はミリアの孫で、ユリオ侯爵は俺達の仲間。俺は悪魔だよ。」
「団長が…?」
「ラマナはユリオ侯爵が面倒を見ていた。」
「ラマナは侯爵の本当の子じゃないんですか?」
「違うよ。」
「じゃあ…」
「魔女の子だ。魔女の王の子。信じたくはないだろうけど、次に悪魔の頂点に立つのはあの男だよ。」
トラ君もラマナの事を悪魔だって言ってた。あれが私の記憶の1つだったら、私はそれを知ってたの?
「侯爵はね、ラマナを悪魔から隠して人間に近くなるように育ててたんだ。魔女の子だという記憶を消すために。そして君と結婚させてあげようと思っていた。けど、願いはかなわなかったみたいだ。」
「結婚しましたよ。無理やりでしたけど。」
「そうじゃなくて、2人は婚約してたんだよ。もちろん反対は沢山あったけどね。」
婚約?
「ユリオ侯爵は少しずつラマナから魔力を抜いていたし、それが出来るのは彼しかいなかった。」
「ユリオ侯爵の元にラマナが帰れば、今まで通りに戻るんですか?」
「……もう2度と戻せない、その理由を想像できない?」
「…まさか……。」
「おそらく殺されてる。この前、ラマナが俺達を襲った時に。」
「っっ!!」
「ラマナが殺してるだろうね。彼を殺せるくらいの力を持ってるのはラマナで、その傍に緑の男がいたはずだ。目覚めたばかりのラマナにユリオ様が殺せる訳もない。力の使い方を教えた。」
嘘だって思いたい…。でもカシュー君も殺されそうになった。
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