ウリちゃんとモモちゃん

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 駅について、電車の車掌さんに手を振ってから、改札口に降りる。「きんちょう」ってよく解らないけど、ドキドキはしてきた。  楽しい気持ち。  いっぱいお話したけど、会うのは初めて。  会ったら、「こんにちは」って言うのかな?   改札口を出てから、オトさんは「こっち」と指をさした。  大きい通りにでて、信号が青になるのを待つ。  渡ったら、ウリちゃんに会える。  長い横断歩道を渡って、細い道に入って、やっと着いた。白いおうち。 「こんにちは。田町です。お世話になってます」  オトさんが、ピンポンって押してからお話した。 「いらっしゃい。お迎え、待ってたわよ」  扉の奥から、大塚さんのニコニコ顔がのぞいた。大塚さんの後ろから元気な泣き声が聞こえる。 「ウリちゃんだ!」  急いで靴を脱いだ。  「ウリちゃん、泣いてる?」 「大丈夫よー。おねえちゃんが来て嬉しいのよ」  奥から、オカさんの声がした。ピンクのタオルを抱えて、布団の上に座ってた。 「手、洗ってくる!」  急いで洗面所に行く。オトナ用だから背伸びして石けんをアワアワする。しっかり洗ってから、オカさんのとこに行った。後からオトさんが来て手を洗ってる。 「ウリちゃん?」  目をギュッとつぶって泣いている小さいヒトを覗き込んで声を掛けると、ちょっと目を開けた。 「ウリちゃん? おねえちゃんだよ」  泣き声が小さくなった。オカさんが、わたしをギュッと抱っこして、おでこにチュってした。 「オカさん、大変だ。カワイイが2倍になっちゃったわ」 「ふふっ。幸せねー」  大塚さんも来た。大塚さんは、ジョサンシさんだ。ウリちゃんが出てくるときにお手伝いしたヒトだ。ウリちゃんがお腹の中にいる時、ウリちゃんがドキドキしてるのを聞かせてくれた。  そうか、ウリちゃんもドキドキしてたんだ。  楽しい気持ちだったんだ。 「あ、オカさんに飴持ってきたの」 「じゃあ、帰りのタクシーの中でもらおうかしら」  後ろでオトさんが電話を掛けている。オオツカジョサンインまでお願いしますって。 「あなたはお腹にいるときはモモちゃんだったのが『ユカリ』になったの。ウリちゃんはね、オトさんといっぱい話して『ルリ』にすることにしたのよ」 「ウリちゃんはルリちゃんなんだね」  わたしはうなづいた。  いらっしゃい。ルリちゃん。  おねえちゃん、オトさんと迎えに来たんだよ。  みんなで一緒に帰ろうね。  わたしは、目を開いてジッとしてるルリちゃんの、髪がふわふわしてる頭をそおっと撫でた。    < 終わり >
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