始まりは、残酷に

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始まりは、残酷に

その頃、とある部屋でのこと。 「キミがトルカポリスで噂の【蒼きシャルトウィーネ】だねっ。いやさ~機術国家は血の気の荒い奴ばっかだしさ、人使いも荒いんだよね」 目の前の人物は白髪に猫の様な黒い瞳の少年だった、異様なテンションで二分前に現れておきながら気さくに話しかけてきました。 助けてミラ様。 「あ~無駄無駄無駄だよ無駄なのさ!それはキミの居るこの世界の娯楽。つまり空想の戯言でしかないもんね?」 此方が反論出来ないのを良いことに次々と攻めてくる、コイツどこかで見た気が。 「ほーんとに哀れなんだな~社会に出たくなくて部屋に立てこもって意味ないじゃんさ? そいで現実に屁理屈不満持ちながら自分の力で。なーんにもしないのおっかしい!」 この人を馬鹿にするような態度とこの容姿端麗(でも喋り方と性格が残念)こいつ何故か知ってるし、つーか黙って聞いてればむちゃんこ腹立つわ!! 「とまぁ、戯れはさておいて~キミのことさ」 寒気が走る、あれ自分震えてんじゃん。 息も上手くできない、怖いコワイこわい何だこれ。 ところで、何だこれは。 自身を貫く剣。 深く刺さっている、痛さなど感じさせないほどに鈍く光っている。 「処分しておかないと、ボクの身も危うくなるからさ~ここでさぁ、無様に死んでよね?」 冷ややかな笑いと共に目の前が暗くなる。 「おいコラー!!こんな奴にやられるとか癪に触って、逝くに逝けないだろうが!!」 そう怒鳴って目覚めたのは牢屋の中、死んでない事にも驚いたが。 何故に麻の服に手足が枷付きなんだよ、そもそも罪人じゃないしな。 しかも左側の壁ないし、そこから冷たい風が吹いてくるし寒い。 「おう、目覚めたか」 其処には如何にもゴツいオークっぽい奴が立っていた、いや仁王立ちで此方を凝視してくる。 「ファンタジー世界、ついに夢で展開しちまったぁああぁあ!?」 つい、奇声じみたセリフ(声ともいう)を発する自分。 ジロジロと見てくるデカいの。 赤い体色が派手でインパクトあり過ぎる。 「そんな趣味はないんですけど、今すぐにこれ外してくれませんかね?」 すると陽気に笑いだしてしまうこのデカブツは名前が無いらしい、豪快に笑い続けながら出て行った。 (いや、助けないのかよ!!) 軽くショックだわ、と言うとあることに気付いてしまう。 声のトーン、いつもより高くね? ていうか、ちょっと服がきついと今更気付く。 あれ、もしかして。 いよいよ夢にまで見たロリ女児の、夢ですか~そうか!! なるほどな、つまりここから抜け出すには。 夢想していたオリジナルの詠唱もどきを始める、期待に胸躍る気持ちだ。 強く願っていた世界での初魔法!! 「古より我を守りし聖なる守護者よ、今……この奇跡こそ神々の威光と知れ!!」 ……。 ……。 「何にも起きないじゃん、何でだよ!!」 ……。 ……。 【その神聖魔法はまだ貴方には使えないですよ、先ずはその身に刻まれた呪いを解くことですね……魔法そのものが使えない呪いに近いみたいだけど】 耳打ちされたような感覚だったが、いや。 問題は其処じゃなくてですね? 「神聖とかマジか、つーか神聖使えてて罪人とか何でだよ!!」 色々と不審な点はあるものの、やはり牢獄は誰がどう見ても抜け出したい。 吹き抜けみたいになっているデカい大穴から出られそうだが、手足を拘束している枷は外れそうにない。 【それは防魔の類の特殊金属で出来ている物ですので、そう簡単には外せないかと思いますが。因みにそちらの壁の破壊は貴方の護衛を務めていたスルトによるものです……鉄壁の守りが暴走しているようですので、急ぎ戦闘による撃破並びに契約解消をお勧めします】 その声と同時に足の枷だけ外れた。 「これで外出れるな、さっきのデカいの前もって錠外してくれりゃあ良かったのに」 試しに蹴りを入れてみるが、鉄格子はビクともしない。 ……。 「あの声が介入してこないってことは、鉄格子の件は既に解決済みということか?」 【……クフッ】 笑いやがった、ひっでぇ!! そういや、魔法がどうとか言ってたな。 自分は普段から魔法を使っていた設定とか? じゃあ、戦意や魔力を押さえたらどうなるんだろう。 ……カシャン。 錠の落ちる音がした、良く調べてみると鍵穴が無かった。 「普通の鍵じゃ開かない筈だわ……今度会ったらデカいのに謝っとこう」 そう呟きながら牢獄を出た転生者こと蒼きシャルトウィーネだった。 しかしそこには惨劇としか言えない光景が広がっていた。
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