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魔法が入り組んでいるであろう街並みを。
麻の簡素な服と両手に枷という、しかも魔法が使えないという状況で契約しているスルトという護衛を倒すとか。
「いきなり積んだんじゃね!?」
【……早くしてくださいよ、魔術国家アトモールが地図から消えたら貴方の所為ですからね】
「な、うるせぇ!!」
(魔術国家アトモールってなんだよ、響き的に魔法使うってことは分かるけど……その、国家ってどういう意味だ?)
自宅で機術国家トルカポリスの蒼きシャルトウィーネと言われたのを思い出すが、その曖昧な記憶は直ぐに崩れ去った。
其処には黒く大きな巨人が人を握りつぶして喰ってはの繰り返し、そして建物を破壊して中の人をまた喰らう。
「いやだ、まだ死にたくない!!」
20代半ばであろうか。
見慣れない格好の男性が、潰されてゴキッという音と共に、おびただしい量の血が地面に落ちる。
「こんな大物が出たなんて、報告は一度も……」
今度は10代ほどの華奢なイメージのある少女だが、パニックとショックで動けないのか。
その場に座り込んでしまう、それでは……。
自分と契約しているらしいアレが何をしているのかはよく分かった、恐らく魔法使いの類を捕食して魔力の回復を行っているのだろう。
その時であった、その残酷な光景を制止する様に少女の前に立ち大剣を向ける。
銀色の鎧に身を包んだ赤い瞳を滾らせた、長い黒髪の女騎士。
相対する敵であるスルトを睨みながら言い放った。
「これ以上、貴様の好きにはさせぬ……ここで討ち取る!!」
そうして壮絶な乱闘が、始まった。
「いや、一応は俺の護衛なんだけどね!?」
とにかく走って何とか間に合えば良いが、そんな中で両手は枷で自由が利かないし魔法も呪いで使えない。
そんな状況であの人を救えるのか、それすらも考える暇などなかった。
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