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「はい？」
一番怒った記憶？
何を言っているんだこの人は。
きょとんとした私を見て、近くの看護師さんがくすくす笑っている。
「もしかしたら血圧が上がるかもしれませんよ」
そして紳士はウインクする。
きっと科学的根拠はないんだろう。怒りで血圧をコントロールできるとは思えない。ジョークで場を和ませようと、血圧が低い人には毎回言っているんじゃないか。
「なにかお仕事で嫌なことあったとか、嫌いな人のことを思い浮かべてみてください」
なおも紳士はにこにこと続ける。
「……わかりました、やってみます」
深呼吸。幸い、怒った記憶なら山ほどある。
とりあえず、最近の記憶から。
「はい、じゃあいきますね」
ベルトを締めた後にピッ、とスタートボタンが押される。
がんばれ私！
血圧が上がるような怒りの記憶をよみがえらせろ！
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