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怒りの記憶、と言われて最近の出来事が次々と再生された。
「きったねーな。それおまえがやる必要なくね?」
嘔吐していた見知らぬ人。ほっとけなくて介抱する私に元カレは言い放った。
「いらん正義感より、大人として上手く世渡りする術を身につけた方がいいよ」
これは、後輩が受けたパワハラを告発した時、人事部長が半ば憐れむように言った言葉だ。
どの場面も、私は相手から無言で立ち去った。
昔はそれなりの立場もあった。当たり前のように力をふるって人助けできた。あの人の前でも誇らしい私でいられた。
今は理不尽なことに怒ってばかりだ。
あの人が今の私を見たらどう思うだろう。
――ピピッ。
測定完了の音が鳴った。私は我に返り、血圧計に注目する。
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