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日高さんのがっかりした顔が結果を語っていた。
「あんまり変わりませんね」
残念。
このまま座っていたら後の人を待たせてしまう。
腰を浮かしかける私に、日高さんは冷静に人差し指を立てた。
「最後にもう一回だけ測ってみましょうか」
「わかりました」
「頑張って怒りの記憶を引き出してくださいね!」
「……はい」
なんだか、献血ができるかどうかより一番怒った記憶をこの場で引き出せるかの戦いが始まった気がする。なんだこれ。
私は封印していた記憶を呼び起こすことにした。
まさか、ここで使うと思わなかったけど。
私には、普通の人と違うところがある。
前世の記憶があるのだ。
前世では、ある小国の姫だった。
城で過ごすより、魔物を倒して民を守りたかった私は旅に出た。そして仲間と巡り合い、魔王を倒した。
過去にあれ以上の怒りを感じたことはない。
目を閉じ、走馬灯のように記憶をよみがえらせる。
遠い過去、魔王との決戦。
傷だらけの仲間。仲間は重傷を負ったし死者も出た。誇らしくて、でもつらくて、思い出したくなかった、あの記憶。
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