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目を見開いた日高さんはまばたきをする。すぐに落ち着いた微笑みを浮かべる。
「測定、終わりましたよ。では、発表です」
脳内でドラムロールが流れる。
ドゥルルルルルルル……ジャン!
「……残念!上85、下49でした!」
「ああ……」
思わず声が漏れる。
大して変わってない。
本日3度目のがっかり。
「なんか、怒りのパワーが足りなかったみたいで、すみません」
まだ頭が混乱している。泣きそうなのをごまかして「へへっ」と笑う。
「いえいえ」と日高さんは言った後、いたずらっぽい表情をぐっ、と近づけた。
私にしか聞こえない音量でささやく。
「――私のことを覚えていてもらえて良かった。またお会いできたらいいですね、姫」
そしてウィンク。
「今回は残念でしたね。食事や運動に気をつけて、ぜひまたお近くの献血ルームにいらしてくださいね。……はい、お待たせしました、次の方どうぞー」
日高さんの流れるようなトークが、私の頭の中を通り過ぎていく。
私はバスを降りた。
夢うつつの私は機械的に車に乗り込み、なんとなく家路を進み、赤信号で止まったところでもう一度今の出来事を思い返した。
…………………………えっ?
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