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第零話 序幕
――この世界は残酷で往々にして理不尽だ
卓上ライトが灯るだけの薄暗闇の空間に男が一人いた。
四方を窓のない壁に覆われた六畳ほどの部屋には、ベッドや椅子など生活するのに最小限の物だけが置かれている。
男は数少ない家財道具の一つであるベッドに腰掛け、組み合わせた手をうつむき加減の額について身じろぎ一つしない。
闇に溶ける濃紫髪の男は幾度となく去来する過去の出来事に思いを馳せていた。
思い起こされるのは、何も知らなかった自分の過ち、後悔、そして恐怖と絶望。
――残酷で理不尽な世界から与えられた、現状を打開するための希望
「……必ず終わらせる」
誰にともなく呟いた言葉を胸に、男は閉ざしていた目を開ける。
組み合わせ頭を支えていた手を解くと、腰掛けていたベッドから立ち上がった。
椅子に掛けられていた黒のロングコートを手に取ると遠心力を利用してばさりと勢いよく羽織り、この部屋唯一の光源であった卓上ライトに手を伸ばす。
――在りし日のため、男は自ら悲劇へと身を投じる
明かりを落とされた部屋を暗闇が包むと、何も見えない室内に迷いのない足音だけが響く。
カチャリという微かな音をさせてドアが開いた。
ドアを開けた先の明るさに目を細めながら男の足音は続いていく。
――この希望を未来へと繋ぐために
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