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第7話:サイトシーイング
◇
2時間ほど歩くと、大きな町に出た。
「兄貴、着きましたで! それに、えらい活気づいてまんな」
「ほんまやの。千林商店街みたいや。出店が出とるし、ちょっと歩いてみよか?」
「観光がてら、ブラブラしまひょ!」
そこはマーケットのような露店が並び、野菜や肉などを売っていた。
珍しい果物を売っている店もある。
俺は果物が大好きや。
特に腹は減っとらんが、買ってみようという気になる。
「おっさん、これなんぼや?」
「おや、異国の旅行者かい? 珍しい身なりだね! 1つ銅貨3枚だよ」
「なんや30円かい。100円渡すし、釣りくれや」
そう言って俺は、100円玉を手渡した。
「お客さん、外国のコインは使えないよ。そうだ、そこに座ってる爺さんがいるだろ? 銀行の出張所だから、そこで両替してくるといいよ」
「なんや、めんどいのう……。しゃーない、ちょっと行って替えてくるわ」
店の主人が言ったとおり、市場の隅に小さなブースを出す爺さんがいた。
「いらっしゃい。両替ですかな?」
「そうや。日本円を換えてくれ」
俺は手持ちの100円玉を渡した。
「これは珍しい! しかし、あいにく、この国では取り扱っていない硬貨じゃよ」
「じゃあ、どこで替えたらええんや?」
「ワシも見たことのない貨幣じゃ。恐らく、この大陸中どこを探しても、両替してくれんじゃろう」
「なんやて!? それは困る! ワシら、日本円しか持っとらんのや。どないか、できんか?」
「申し訳ないが、どうすることもできん」
「マジかよぉ……」
俺は諦めて店に戻った。
「虎鉄、行くぞ。おっさん、その果物もうええわ。」
「ひょっとして、両替できなかったんですか?」
「そうや、残念やがの……」
「分かりました。お金が出来たら、また来てくださいね!」
返事する元気もなかった。
変なところに連れてこられ、両替もできやん。
無一文になった俺たちは、途方にくれた。
「兄貴、どうしましょ? 金無かったら、飯も食えませんで……」
「そうやのう……。あんまり気は進まんけど、アレしかないのう」
「アレって、何ですの?」
「カツアゲやがな!」
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――クロス作品――
『異世界・宮廷料理人ティルレが、モンスターを使った無双レシピを公開するわよ!』
『イセカク ~異世界格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~
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