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第9話:愚鈍
「あれ、お連れの方ですか? いえいえ、世話になってるのは、こっちの……」
何がお連れの方ですか?じゃ。
絡んどいて、白々しい。
「問答無用じゃ!」
「うわ、何を……、ぐわぁぁぁ!」
俺はリーダー格の男をぶっ飛ばした。
槍を持った危険な相手。
完全に、正当防衛やろ。
「お前、何をする!?」
「兄貴、これは……」
「虎鉄! お前は、下がって見とけ!」
他の2人が剣を抜いた。
ここまで来たらトコトンよ!
「うぎゃ!」
「ぐへっ!」
剣ごと相手を殴り倒してやった。
自慢の剣が真っ二つ。
見たか、俺の正義の拳を!
しかし、一発で気絶するとは、だらしない。
今度は、ローブの男が呪文を唱える。
こいつ、頭沸いとんのか?
呪文唱える奴、初めて見たわ。
「くっ、何故だ! なぜお前には、魔法が効かんのだ?」
「コンコン。脳みそ入ってまっか~?」
「近寄るな! 化物め! お前、ひょっとして『愚鈍』か?」
「グドン? うどんの親戚け?」
「うどんじゃない! 愚鈍だ! 伝説でしか知らんが、魔法が通じない者をそう呼ぶのだ」
「いやいや、魔法とか超能力とか、そもそも無いからね」
「くそ……分が悪い……。何が望みだ?」
「話早いがな。慰謝料払ろてもらわな困るんや」
「何の慰謝料だ!?」
「うちの虎鉄くんが、あんたらに絡まれて心の傷を負うたんや。のう、虎鉄?」
「いや、俺はその……」
「のう!!!???」
「へい、兄貴……」
「な? そういう訳で、治療もあるし、早よゼニ払わんかい!」
「くそ! しょうがない持っていけ、守銭奴め!」
男は硬貨の入った革袋をこちらに投げた。
「毎度あり♡ じゃあ、ゆっくり、しとくなはれ。行くぞ、虎鉄!」
「へい……」
そう言って、虎鉄と俺は歩きだした。
袋を見ると、銀貨や銅貨が入っている。
どれだけの価値か分からんが、飯ぐらいは食えるやろ。
「虎鉄、ようやった! これで飯が食えるぞ!」
「兄貴、ずっと言おうと思てたんですが……」
「何や?」
「あれ……、絡まれたんじゃなくて、道を聞かれただけで……」
「アホ! 何で、先言わんのじゃ!」
「何回も言おうと……」
「やかまし!」
「へい……」
「まあ、済んだことはええ。それより、これからどうするか、飯食いながら作戦会議や!」
「へい、兄貴……」
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――クロス作品――
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