第9話:愚鈍

1/1
前へ
/253ページ
次へ

第9話:愚鈍

「あれ、お連れの方ですか? いえいえ、世話になってるのは、こっちの……」  何がお連れの方ですか?じゃ。  絡んどいて、白々しい。 「問答無用じゃ!」 「うわ、何を……、ぐわぁぁぁ!」  俺はリーダー格の男をぶっ飛ばした。  槍を持った危険な相手。  完全に、正当防衛やろ。 「お前、何をする!?」 「兄貴、これは……」 「虎鉄! お前は、下がって見とけ!」  他の2人が剣を抜いた。  ここまで来たらトコトンよ! 「うぎゃ!」 「ぐへっ!」  剣ごと相手を殴り倒してやった。  自慢の剣が真っ二つ。  見たか、俺の正義の拳を!  しかし、一発で気絶するとは、だらしない。  今度は、ローブの男が呪文を唱える。  こいつ、頭沸いとんのか?  呪文唱える奴、初めて見たわ。   「くっ、何故だ! なぜお前には、魔法が効かんのだ?」 「コンコン。脳みそ入ってまっか~?」 「近寄るな! 化物め! お前、ひょっとして『愚鈍』か?」 「グドン? うどんの親戚け?」 「うどんじゃない! 愚鈍だ! 伝説でしか知らんが、魔法が通じない者をそう呼ぶのだ」 「いやいや、魔法とか超能力とか、そもそも無いからね」 「くそ……分が悪い……。何が望みだ?」 「話早いがな。慰謝料払ろてもらわな困るんや」 「何の慰謝料だ!?」 「うちの虎鉄くんが、あんたらに絡まれて心の傷を負うたんや。のう、虎鉄?」 「いや、俺はその……」 「のう!!!???」 「へい、兄貴……」 「な? そういう訳で、治療もあるし、早よゼニ払わんかい!」 「くそ! しょうがない持っていけ、守銭奴め!」  男は硬貨の入った革袋をこちらに投げた。 「毎度あり♡ じゃあ、ゆっくり、しとくなはれ。行くぞ、虎鉄!」 「へい……」  そう言って、虎鉄と俺は歩きだした。  袋を見ると、銀貨や銅貨が入っている。  どれだけの価値か分からんが、飯ぐらいは食えるやろ。 「虎鉄、ようやった! これで飯が食えるぞ!」 「兄貴、ずっと言おうと思てたんですが……」 「何や?」 「あれ……、絡まれたんじゃなくて、道を聞かれただけで……」 「アホ! 何で、先言わんのじゃ!」 「何回も言おうと……」 「やかまし!」 「へい……」 「まあ、済んだことはええ。それより、これからどうするか、飯食いながら作戦会議や!」 「へい、兄貴……」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ ――クロス作品―― 『異世界・宮廷料理人ティルレが、モンスターを使った無双レシピを公開するわよ!』 『イセカク ~異世界格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加