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第10話:結局、飯食っただけ
大通りから1つ外れた落ち着いた通り。
入り口が大きい、石造りのレストランに入った。
木版のメニューには、目を通さない。
字が読めんのとちゃうで。
めんどくさいだけやからな……。
「おい、女将! 金はある! 美味いもん持ってきてくれ! それからビール2つや!」
「あいよ!」
元気のいい女将が、てきぱきと働いとる。
こういう店は、活気があって好っきゃねん。
「はい、ビール2つ置いとくよ」
テーブルのビールを眺める。
変わった器や。オレンジ色の素焼陶器か。
陶器というより、土器に近い。
中のビールも白く濁っている。
飲んでも大丈夫なんやろか?
「とりあえず、初カツアゲに乾杯や!」
「ほな……、乾杯です……」
炎天下を歩いてたせいで、喉がカラカラ。
2人とも競うように、ビールを口に運んだ。
「何やこれ!? 普通のビールとえらい違うな?」
「そうでんな。何かこう……、出汁みたいな味でんなぁ。気も抜けとるし」
「この辺の地ビールかのう? これは、これで悪くないけど」
「そうでっか? 俺は、もうちょっと、炭酸が効いてるほうが好みですわ」
「それに、アルコール度も高いぞ? 10度ぐらいありそうや。麦で作ったどぶろくみたいやのう」
「確かに! どぶろくや思たら、案外いけますなぁ」
「おい、飲み過ぎんなよ! お前酔っぱらったら、たち悪いからなぁ」
「分かってまんがな!」
虎鉄は酒癖が悪かった。
悪いと言うレベル通り越して、全く別の『生物』になりよる。
特に飲んで暴れると、ワシでも手に追えん。
暴れた巻き添えで、留置所に何回放り込まれたことか。
「はい、お待ちどう! ゆで卵よ」
「ゆで卵が突き出しとは、変わっとるなぁ」
「この辺では、卵から始めてリンゴで締めるのが習わしなの」
「さよか。とりあえず、ジャンジャン料理持ってきてくれ」
「あいよ!」
それから、色んな品が運ばれてきた。
料理は素朴な味がした。
肉や野菜は、焼いただけ。
味付けも塩、胡椒と何や分からんスパイスとか。
スープも豆が入ってたり、どこか家庭料理みたいな味やった。
「何か、一味足りまへんな、兄貴?」
「そうか? ワシはこれでええと思うけどな」
「おかあちゃん、ザーサイないの? 小皿に入れて持ってきてー」
「あたいは、あんたの母さんじゃないよ! それに、ザーサイって何さ?」
「ザーサイ言うたら……」
「アホか。ここが中華料理屋に見えんのか? ザーサイなんか置いてるわけないやろ」
「確かに、中華料理じゃなさそうな……」
「ったく……。ところで女将さん、キムチもらえる?」
「それも、うちには置いてないよ!」
◇
「はー食った、食った!」
「おかーちゃん、ビール持ち帰りできる?」
「まだ飲むんかい」
「いや、あとでちびちび飲もうと……」
「それやったら、つまみも貰ろとけ。さっきの肉でええか?」
「へい、それで頼んます!」
「女将さん、さっきの肉5人分持ち帰りと、お勘定も頼むわ!」
「兄貴、ご馳走さんです!」
「暫くは、財布は一つじゃ。遠慮はいらん」
俺たちは、支払いを済ませ店を出た。
少し酔いが回っていたこともあり、いつの間にか人通りのない森近くまで来ていた。
道も草だらけで、猫一匹歩いてない。
「なんや建物が無くなっとるのう。引き返して……」
その時、後ろから野太い声が聞こえた。
「おい、人間!」
「ああ~ん?」
振り向くと、2mを超す巨大な鬼達が立っていた。
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――クロス作品――
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