第13話:動悸、息切れ

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第13話:動悸、息切れ

 ごちゃごちゃ考えると、判断が鈍る。  今は、こいつを殴るだけ。  それ以外、考えたらあかん。  光ってるいうても、痛い訳やないからな。 「んなもん知るか! 勝手に光っとんのじゃ!」  俺が先手で殴りかかった。  しかし相手の背丈は3m。  顔に入れるには工夫がいる。  先ず、腹をおもくそ殴って、顔が下がるのを待つまでや。  みぞおちあたりに、ボディを連打! 「それが、お前の精一杯か? 痛くも痒くもないのだが?」  くそ! これじゃ効かんか!?  それやったら足狙いじゃ!  俺は相手の膝をしつこく責めた。  足で蹴り、膝蹴りを入れる。 「頑張ってるようだが、時間切れだ。こちらからも、いくぞ!」  鬼は、突然動き出した。  巨体に似合わぬ、俊敏さ。  こんな速い相手は、初めてや!  まるで、F1マシンと戦ってるようやで! 「どうした? 逃げてるだけでは、倒せんぞ!」  言われんでも、分かっとる。  まだ、スピードに目が慣れんのじゃ!  ええい、こうなったら足止めたる。 「おりゃぁぁぁ!」     俺は鬼の膝にしがみ付いた。  相手は引き離そうと、足を振ってなぎ払う。  せやけど、この足離さんで! 「ええい、忌々しい!」  刹那、オーガが右手で俺を掴もうとした。 「この瞬間を、待っとったんや!」  そして右手に飛び掛かり、瞬時に相手の肘を取りにいく。  両足は鬼の上腕に絡め、両腕で手首を押さえる。 「親父直伝、『空中・腕ひしぎ逆十字』やぁ!」 「うぎゃぁぁぁぁ!」  思ったより簡単に肘が折れた。  怯んでる隙に、今度は脚をもらうでぇ!  飛び降りた俺は、重心のかかった前足を蹴り上げた。  バランスを崩した巨体が、ドスンと落下。  すかさず、『足首固め(アンクルホールド)』を取りに行く。 「こんなん、どないでっかぁぁぁぁ!?」 「うわぁぁ!」  身体全体で、足首を掴む。  相手はサソリのように腹這いや。  これなら、俺に攻撃でけへんやろ! 「早めにギブ言わんと、足首も折れるでぇ!」  しかし、一つ想定外やった。  鬼の脚力は、人間の何倍も強かったんや。   「こしゃくな、人間め!!!」  足を伸ばされて、俺は吹き飛んだ。  しかし、受け身が取れて何ともない。  体育の授業で、柔道やっててよかったわ。 「くそ、図に乗りよって……。殺してやる!」  鬼がおもむろに立ち上がる  しかし重心が、右へ傾むいとる。  さっきの足首固めは、効いたようやで。  足潰したから、俊敏さはないやろう。  これで、形勢逆転や!  再び、相手が向かってきた。  足をひきずり、重心は低い。  さっきに比べて、格段に遅いがな!  俺は攻撃をかわし、顔面に拳を打ち込む。 「えらい、トロなったの? ほらほら、もっと行くでぇ!」  そこから、何十発もぶちかました。  しかし、さすがは鬼の親玉。  なんぼ頭突いても、顔色ひとつ変えよらん。  ワシの親父より強いんちゃうか? 「はぁはぁはぁ……。お前、ええ加減倒れんかい!」 「だまれ! お前を食うまでは、諦めんぞ!」 「さよか……。ほな、せいぜい気張……、うっ!」  突然、激しい動悸がした。  なんやこれは……。  恋する乙女か!?  心臓バクバクやんけ。  ちゅうか、普通の心拍数ちゃうぞ!  こんな時に、心臓発作か?  『救心』とか持ってへんがな……。  そして鬼が、俺を見てニヤリと笑った。 「どうした、人間? 胸など押さえおって。どうやら、俺に運が回ってきたようだな」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ ――クロス作品―― 『異世界・宮廷料理人ティルレが、モンスターを使った無双レシピを公開するわよ!』 『イセカク ~異世界格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~』
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