117人が本棚に入れています
本棚に追加
第14話:これを、覚醒と呼びまんのか?
激しい動悸で眩暈がする。
喉の奥からすっぱいもんが、込み上げてきた。
そうや、光ってた入れ墨と関係あんのとちゃうか?
俺は、胸の光に目を向けた。
なんやこれ、点滅しとるやんけ!
「よそ見するとは愚かだ、人間!」
再び鬼が、殴りかかる。
その瞬間、光が消えたのをはっきりと感じた。
そして不思議なことに、全ての物が停止した。
いや、止まってんやない。
周りの景色も、相手も、ゆっくりと動いとる。
ただスローモーションに、見えとるんや!
しかし、爽快な気分やで。
シャブ打ったような、高揚感。
身体中から、力がみなぎってくる。
まるで、無敵になったみたいや。
今、殴ったら、めっちゃ強いんちゃうの俺?
おっと、目の前のこいつ忘れとった。
よう見たら、なぐる時の顔ってマヌケやの。
とりあえず、後ろに立って脅かしたろ。
ほな、行きまっせ!
「は? どこに行った!?」
慌てとる、慌てとる。
後ろから声かけたらビビるかな?
「ほんま、何処いったんやろね?」
「何!? 貴様、どうやってそこまで動いた!!!!」
鬼が振り返って大慌て。
「今まで、ちょっと遊んでたんよ。これから、本気出すけど、ええんかな? ゼニ次第では、許したってもええんやで?」
「は、ハッタリだ……。さっきまで、肩で息をしていたではないか……」
「さいでっか。分かるまで、格の差っちゅーのを教えたろ」
俺は、軽く顔面にパンチを入れた。
刹那、耳を突くような残響がこだまする。
なんや、物ごっつい威力やんけ!
「ふぎゃ!」
鬼は、倒れて動かんくなった。
しまった、顔はまずい!
ボディにせな、ボディに!
「おい、ちょっ……。今死なれたら、ゼニならんやんけ! 起きよ、おい!」
次の瞬間、周りの鬼達が一斉に向かってきた。
「おい、ボスがやられたぞ! やっちまえ!」
はいはい、お馴染みの負けフラグやね。
ちょい黙らせて、仕事しよか。
俺は、デコピンで全員の顔を突いてやった。
「痛て!」
「うわぁ!」
「ぎゃあぁぁ!」
なるほど、黒と緑じゃ硬さが違うんか。
デコピンだけで、緑の鬼は戦闘不能。
黒の奴らは、まだ行けそうや。
「おら、連続パチコ~~~ン!」
「うぎゃぁぁぁ!!」
「デコピンお代わりほしい奴、言うてこい! 食い放題やで~~!」
「くそ! なめやがって!」
「おどれか! も一発、パチコ~~ン!」
「ぎゃぁぁ! 悪かった、もう止めてくれ!」
「だらしない奴っちゃ。他に悪い子は、いねがぁ?」
全員目を背けて、うつむいとる。
日和るんなら、最初から喧嘩売んなや。
まぁこっからが、極道のお仕事や!
「よっしゃ、全員正座! それと、言葉づかい気ぃつけな、パチコンすんぞ!」
「は、はい!」
鬼達が行儀よう正座して、俺の言葉を待つ。
そうそう、やれば出来るやないの。
「そっちから喧嘩売っといて、どない落とし前つけてくれはりまんのや? おう?」
「わかりました。我らの負けです。この通り、土下座して謝りますので、どうか命ばかりはお助けを!」
「謝って済んだら、警察も極道もいらんねん! オドレが始めた喧嘩やろ、きちんと誠意見せたらんかい!」
「誠意? 一体、どうすれば?」
「ほら、あるやろ? 大人やったら、目に見える形のお詫びの仕方が? これや、これ!」
俺は指を輪っかにして、ゼニのジェスチャーをした。
「なるほど! 『形』とは、そういう事ですか!」
「そうそう、皆まで言わすなよ」
「それじゃあ……」
鬼達がわらわらと集まり出した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
――クロス作品――
『異世界・宮廷料理人ティルレが、モンスターを使った無双レシピを公開するわよ!』
『イセカク ~異世界格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~』格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~』
最初のコメントを投稿しよう!