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第16話:宴
◇
虎鉄のせいで仕方なく、鬼達の宴に参加した。
正直、あんま気がすすまんが……。
「客人、何もできないが、楽しんでいってくれ」
「おお……」
「先ずは、山ぶどう酒で乾杯しよう」
「ん、これは!? 綺麗な色しとるやないか!」
「味も最高だぞ。それでは、乾杯だ!」
ぶどう酒を一口飲んだ。
濃い紫色の液体は、香りも繊細でフルーティ。
なんちゅーか、高貴なかんじの味がした。
こいつらが、こんなもん飲むなんて信じられん。
「お、これ美味いやん!?」
「兄貴、高級な味がしまんな!」
「気に入ってもらえたか?」
「なかなか、いけるがな! 商人でも襲って、くすねたんか?」
「いやいや、ゴブリンどもに咀嚼させ、吐き出した山ぶどうを発酵させた物だ」
「そ……咀嚼って……」
「ああ、噛んでクチュクチュしたやつをペッて……」
「あほか! なにが『ペッ』じゃ! 汚いわぁ!!」
同時に、虎鉄がぶどう酒を噴き出した。
「おえぇ……。兄貴、わい気分悪なってきましたわ……」
「口に合わないか……」
「合う合わん、以前の問題や! 衛生面に難ありまくりや!」
「これは、失礼した。それじゃ、スープだけでも飲んでいってくれ。もう少しで、出来上がるのでな……」
「分かったわい! 飲んだらすぐ帰るぞ!」
「それより、お主は強いのう! こんな強い人間は、初めて見たぞ。本当に人間なのか?」
「あたぼーよ! 人間ゆうても極道や! 極道が、素人に負ける訳あらへんがな!」
「おお、ちょうどスープが出来がったぞ。ささ、食べて行ってくれ」
黒鬼が、肉入りのスープを手渡してきた。
薄暗い森の中、スープの中身を覗き込む……
「何や、これ! ひ……、人の手入ってるやないか!?」
「我らにとって、人間の肉が何よりのご馳走……」
「こんなもん食えるかい!」
俺は、スープを地面に叩きつけ、ちゃぶだいをひっくり返した。
「客人……なぜ、そんなに怒るのだ……?」
「そら、怒るわいアホ! お前ら、反対にオーガの肉食わされたら、どない思うねん?」
「別に何とも……」
「は? お前ら、自分達の仲間の肉食えるんか?」
「このスープにも、死んだ仲間の肉が入っているので……」
「えええ!? あかん……。お前らと話しても、時間の無駄や! おい虎鉄、帰るぞ!」
「へい、兄貴」
「客人、待たれよ……。お客人ーーー!!」
こうして、俺たちは森を後にした。
◇
――森の陰――
「あいつ、なかなかやるニャ……。声を掛けてニャワ……」
――先に目を付けたのは、私なんですがね――
「ニャ! お前は『傭兵スカウト』のクロード!! いつからそこにいたニャワ!?」
「〇×商会のシベット殿、ごきげんよう。私はずっと居ましたよ」
「気配を消すとは、あいかわらず気色悪い奴ニャワ!」
「そんなことより、彼らを先に見つけた私に、声をかける権利があるんですがね?」
「何言ってんだニャ! 先に目を付けたのは、私のほうニャー!」
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――クロス作品――
『異世界・宮廷料理人ティルレが、モンスターを使った無双レシピを公開するわよ!』
『イセカク ~異世界格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~』
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