第1話:難波の花

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第1話:難波の花

「おんどりゃあ、死ねや!」  ミナミで、因縁をつけてきたチンピラが殴りかかってきた。  俺は、カウンターで右フックを浴びせた。 「うぎゃぁぁぁ!」  チンピラは口から血を吐き流し、その場に倒れた。  感触からして、あごが外れたやろう。  もう一人のチンピラが、威勢よくタンカを切る。 「われぇ! どこのもんじゃ? わしらのバックに、極悪会がおると知っててやっとんのかい?」  弱い犬ほどよう吠える。 「わしか? わしは、その極悪会直系(ちょっけい)花岡組の『花岡』いうもんや」 「え!? ひょっとして……、本名・花岡(はなおか) 竜二(りゅうじ)33歳、通称『ステゴロの(たつ)』の兄貴ですか?」 「まあ、そんなところや!」 「構成員1万人、日本最大の暴力団・極悪会直参(じきさん)の、拳だけで殺しをやるという伝説の殺し屋。100人からの組を独りで潰した『5.17事件』など、その伝説は数え切れず。先代会長が生きてた頃は、兄弟分の盃で優遇されたけれど、今の会長とは折が合わずくすぶってはるっていう、あの竜さんですね?」 「うぅ……、まぁ……そんなとこや……」 「失礼しました! 今日のところは、もう堪忍してください!」  そういうと、チンピラ達は仲間を連れ、逃げるように去っていった。  自己紹介が省けたことやし、ええっちゅうことにしとこうか。  そう、わしの名前は花岡 竜二。極悪会直系花岡組の……(以下略)  おっと!  そんなことより、舎弟の虎鉄(こてつ)と、事務所前で待ち合わせしとるんやった。  早よいかんと恰好がつかん。  猛ダッシュやでぇ~♪ ◇ 「ここや、ここや! 長堀極悪ビル」 「あ、兄貴! いつの間に来たんでっか!?」 「すっ飛んできたんや。1話目からチンタラしてたら、読者が逃げるからの」 「は? どういう意味ですねん?」 「詳しい話はあとや! とにかく黒田んとこ行くぞ!」 「へい。ところで上納金の件、言うんでっか?」 「当り前じゃ! 毎月締め付けがきつ過ぎるからのぉ。他の組長らもひぃひぃ言うとるわ!」  上納金(じょうのうきん)とは、所属する組織に対して支払う会費みたいなもんや。  先代のころは、無茶な額ではなかったが、今の会長に変わってから、法外な額を要求するようになった。  組織の者みんな、今の上納金には不満がたまっとる。 「でも金の話は、揉めまっせ……」 「アホか! 極道は揉めてなんぼじゃ! 虎鉄、お前はここで待っとけ。2人で行くと警戒されるからの」 「へい、兄貴! それじゃあ、お気をつけて!」 「おう!」  そう言って俺は、ビルに入っていった。  受付で名前を言うと、別の女性が俺を会長室まで案内する。  エレベーターで最上階まで上がると、黒田がソファーに座り待っていた。 「おお、竜二か。久しいのぉ。襲名式のとき以来か?」 「挨拶はええ」 「相変わらず愛想のない奴っちゃ。で、何用や?」 「ゼニの話や!」
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