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第3話:ロシア人
◇
虎鉄と駄菓子屋で飯を食い、カラオケボックスで盛り上がった。
軽い息抜きのつもりやったが、飲み過ぎたみたいや。
その後あいつに送ってもらい、家の近くで車を降りた。
「じゃあな、虎鉄。ワレ、気ぃつけて帰ったれよ」
「へい。ほな、また明日」
車を降りると外気が冷たい。
白い息を吐きながら、アスファルトを歩いていった。
アパートまで1分の距離。
路地を曲がって、薄暗い細道に入る。
いつも通る、歩きなれた道。
しかし、何時にない只ならぬ気配を感じる。
「ん? これは何や!?」
足元を見ると、不思議な物が落ちていた。
切れかかった街灯の光が、銀色の丸い物体を映しだす。
「ごごご……、500円玉やないけ!!」
俺は慌てて身をかがめ、即座に500円玉を拾った。
その瞬間、風を切るわずかな銃声がする。
――何や!?
刹那、近くにあった窓ガラスが割れた。
――狙撃か! サイレンサーやの! 素人ちゃうなぁ!
即座に頭の中が、戦闘モードに入る。
長年の修羅場がよみがえった。
一瞬のうちに、頭の中でいろんな分析を行う。
俺を狙うんやったら、1人じゃないやろ。
10人、いや20人か?
この細道やと相撃ちになるし、銃で来るなら片側から、ナイフやったら挟み討ちで来るやろう。
どっちにしても、立ち止まったら恰好の標的や!
先ずは、さっきの通りにでよう。
あそこなら目立つし、相手も派手には動けんはず!
一歩踏み出すと、軍服の男達が前に立つ。
それも同時に、おっさん5人。
両手に自動小銃を構えてやがる!
ロシア製、AK47カラシニコフ。
大層なもん持っとるやんけ!
「умереть! сукин сын!(死ね! クソ野郎!)」
銃を持つ相手は、簡単や。
近寄りさえすれば、防御を取れない。
俺は弾を避けながら、端の1人に近づいた。
頸動脈に手刀を一撃。即座に眠らせる。
今度は、そいつを盾に2人目を襲い、また一撃。
そうやって5人を、芋づる式に片づけた。
さらに4人が、後ろから援護に来る。
遠目だが、走りながら乱射する火花が、はっきり見えた。
だが、俺に弾は当たらない。
「я не могу в это поверить. он уворачивается от пули!(信じられん、弾を避けてやがる!)」
「говно! это невозможно!(デタラメだ! この距離で当たらん筈がねぇ!)」
相手は相当焦っとる!
まあ、無理もない。
なんせ、俺の動体視力は2.0や!
測ったことは、ないけどな。
俺は相手の武器を取り上げ、喉元に肘打ちをかました。
3人とも、すでに気絶している。
残るは、目の前のデカブツだけ。
そいつは、銃を捨ててナイフを抜いた。
手招きをして、挑発してきよる。
「えらい、金玉座っとるがな! お前が大将で間違いないのう!」
「Я тебя на куски порежу!(バラバラに切り刻んでやる!)」
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――クロス作品――
『異世界・宮廷料理人ティルレが、モンスターを使った無双レシピを公開するわよ!』
『イセカク ~異世界格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~
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