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第5話:GA●FY の功罪
「……いや、だから……お主らは勇者なのかと……」
「だれが、容疑者じゃ! 証拠あるんなら、見せてみんかい!」
虎鉄は、少し耳が悪い。
いや、耳だけの問題やないが……。
「王に無礼であるぞ! 狼藉を働くなら、その首を刎ね飛ばすぞ!」
お付きの家来まで、しゃしゃり出てきた。
あかん方向や。
こういう時は、冷静にいかんと。
「虎鉄、もうええ。あとは俺が話する! 黙って見とれ!」
「へい、兄貴」
「王さん、そのユウシャって何ですねん?」
「勇者とは、敵を倒す為に、我々が呼び寄せた者のことじゃ」
「敵っちゅうんは、誰ですん?」
「我がロネア王国は、隣接するガロア人達と戦争をしておる。相手は、人間と思えん百戦錬磨の集団じゃ」
「それじゃあ、そのガロア人とかいう奴らを、倒す兵隊を呼び出したかったんでんな?」
「まあ……平たく言うと、そういうことになるが……」
「王さん、あんたラッキーやで! ここにおるワシ等こそ、日本一の兵隊やがな! ただ……、謝礼もそれなりに弾みまっせ!」
「勇者が、金をせびるのか……!?」
そう言うと、王と家来はひそひそ話し始めた。
――陛下、この者たち、ガラが悪ぅございますぞ。
――確かに。若いくせに、ジジくさいしゃべり方だしのう。
――それに、あの恰好は何です? 骨を咥えた犬の顔が、大変怪しゅうございます!
――うむ、どう見ても勇者の鎧には見えんな……。あの犬の顔、きっと邪宗の悪魔に違いない!
――ここは体よく追い返された方がよいかと。
――そなたの言う通りじゃ。追い返すとしよう!
「おほん……、そこの者、どうやら人違いをしたようじゃ」
「人を呼び出しといて、人違いで済むかい! どない落とし前つけるつもりじゃ!」
「いやいや。わしらは、呼び出しておらんようなのじゃ」
「はぁ? この状況で、そんな言い訳通じるかい!」
「もしも、わしが呼び出したのなら、お主らは魔法陣の中にいたはずじゃ。しかし、お主が現れたのは、そっちの隅っこ。分かる? 部屋の端っこね? つまり、そっちが勝手に迷い込んできたって訳なのよ」
「よ……、よう分からんけど、誤魔化されへんぞ!」
「まぁとにかく。そういうわけだから、バイバイ、Sayonara、アリベデルチ~。皆の者、見送って差し上げよ」
「はっ!」
その瞬間、数十人の家来が俺たちを担ぎ上げ、出口へと運んでいった。
「おいお前ら、どこ触っとんのじゃ……! こちょばいがなww!」
「くそ、覚えとけ! このシマで商売でけんようにしたるからのぉ~~!」
こうして俺たちは、城を追い出された。
◇
――城門前――
「兄貴……。どないしましょ? ワシ腹減りましたで……」
「さっき食ったばっかりやろ! 何で腹減るねん!?」
「家帰って、お茶漬け食べるつもりでしてん……」
「それにしても、一体ここはどこや?」
「どう見ても大阪には、見えまへんなぁ……。和歌山あたり、でっしゃろか?」
見渡す限り、ブドウ畑。
和歌山のブドウは、あまり聞かん。
やとすれば、岡山や!
とにかく、町まで出んとどないもならん。
「おい、門番! 町に出るにはどうしたらええ?」
「一番近くの町は、この道をずっと真っすぐいけば着く」
「そないか、おおきに」
「それから……」
「はいな?」
「もう2度とこの城には近づくな、腐れ貧民ども!」
「ワレ、誰に向かって口聞いとんじゃ? ただで済む思とんかい!」
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――クロス作品――
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