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それから、3日が経った時だった。
遥妃の母親から『遥妃の目が覚めた』と連絡を受け1日、ようやく腰を上げて翠月は病室前にいた。
「…………」
そして、横には何故か氷聖もいた。普段出掛けることをしない氷聖が翠月を心配してか、わざわざ付いて来たのだ。
遥妃は二人部屋だったが、ベッドはひとつ空いており、実質一人部屋のようなものだった。
「じゃあ、行く」
翠月が戸をノックすると「はーい」と聞き慣れた声がした。
「……」
しかし、その声に翠月は戸が開けられなくなってしまった。ほぼ毎日聞いていた声のはずが『生きている』ことに『恐怖』を感じてしまったのだ。
「は……遥……」
息を吐くように呼んだ名前、その様子に痺れを切らしたか、氷聖は翠月の腕を掴むと思いきり扉を開けて、病室に入って行く。
「え……っ!ちょ、氷聖!?」
そして、ふたりの視界に遥妃が映った。
「……氷聖くん?……と、翠月……」
驚きよりも困惑した表情で、遥妃はベッドを起こした状態で、ふたりを見つめ返して来た。
「……ごめんね。私もお母さんから聞いたの。まさか、二週間も眠っていたなんて……。検査して、脳も異常ないって先生から聞いたから。骨折とかはしちゃったけど……」
遥妃の身体のあちこちに傷があるのを、翠月は見たくなくても見てしまった。傷つけられた身体。それが一生治らないのかもしれないと、翠月は幾度めかの罪悪感に陥る。
「とりあえず、ふたりとも座って。椅子、2個あるし」
骨折していない左手で、遥妃はふたりを手招きした。
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