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 それにしても、と志築さんを見上げた。  身長170センチほどある私が見上げるくらいに高く、ジャケットの上からでもわかるぐらい身体が引き締まって見える。  少し長めの黒髪はセットしやすい長さだろう。男性にしては少し肌が白いせいか、眉の凛々しさとくっきり二重がより際立って見えた。  シャープな顎に収まる薄い唇。  そして、彼の顔立ち全体を司る鼻筋がとても綺麗だ。  「峰、式場ツアーよろしく」  支配人は志築さんにざっくり説明するとあとは私にすべてを投げてきた。  ひっそり彼を観察していた私は内心慌てながら思わず眉根を寄せれば志築さんに小さく笑われた。  「仲いいんですね」  「支配人とはプリエール立ち上げからの付き合いなので」  「なるほど」    新人くん、もとい、志築さんは小さく頷くと僅かに頭を下げた。    「よろしくお願いします。峰さん」  「…はい、では」  なんだ、この人懐っこさは。  いや、いいんだけどね。皆私のことそう呼ぶし。  でも初対面でいきなり「峰さん」って。  ……あれ?私ちゃんと「藤峰」って言ったよね?  うん、まあいいや。  気にしない、気にしないと心の中で呪文を唱えるように呟きながら志築さんとオフィスをでる。  「それは、制服ですか?」  オフィスから式場に向かっていると、隣を歩く志築さんが私を見て訊ねた。  「そうです。後ほど制服のサイズ合わせも行いますので」  式場のスタッフ、つまり社員には制服がある。女性はネイビーのジャケットにクロップド丈のパンツ。ヒールは5センチ以上と少々規定が厳しい。  他には肩につく長さの髪はひとつにまとめること。イヤーアクセサリーはパール・もしくはダイヤであること。もちろん本物である必要はないが、見た目で安っぽさが見えるものは支配人からアウトが下される。  また、フェアや挙式中はスカーフを巻くことが許される。  航空関係者かい、と初めは思ったけど、それがなかなかスタッフの評判もいい。顔回りに華やかさがあり、印象がグンとよくなるのだ。
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