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ぴちゃん、…ぴちゃん。
薄い意識の中、水の音がして目が覚めた。
霞む目の前をヒュッと通り過ぎてゆく水。いや、水滴と言った方が正しいかもしれない。
床を見れば、まるで大きな犬がよだれを垂らしたような、誰かが零したような水たまりができていた。
これはなに、と見上げれば冷蔵庫の扉が開いている。
慌てて閉めたけれど、これで冷蔵庫が壊れたらどうしよう、と泣きそうになる。
重い腰を上げて、なんとかコップに水をいれてようやく水を含んだ。
生ぬるい水だった。
だけど、久しぶりに飲んだ水分だ。
飢えた獣のように、もう一杯と水を飲んだ。
今度は飲むときに困らないように、蓋を開けたままでペットボトルに水を入れてベッド脇のテーブルに置いた。
さんざん眠ったはずなのに、横になればすぐに瞼が重くなる。
その重みに負けた瞼がくっつくころに、もう意識は霞んでいた。
真っ暗な部屋で違和感を感じて目を開ける。瞼を閉じていても分かるほど、目に突き刺さりそうなほどまばゆい光が差し込んでいた。それはチカチカと点滅して、存在を知らせようとしている。
蛍光色のランプはメールのお知らせ。
煩わしいけれど、そのランプを消すためには既読にするしかない。
私は手を伸ばして携帯を開ける。パかッと開いた携帯画面には、着信と受信メールの数が表示されていた。
電話は昨日の夜から今までに10件。メールは13件ととても多い。
メルマガ等も登録していない私の携帯にこんなにも一気に履歴が残ることは珍しい。というか。三十三年生きてきて初めてだと思う。
眉を顰めながら、目をつぶりながら、もう見なくても分かる操作をする。
とりあえず、目に毒であるこのランプさえ消せればどうでもよかった。
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