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 目がだんだん慣れてくるとぼんやりする頭でもメールの内容が頭にはいってくるようになった。送信相手は志築くんで、着信もすべて志築くん。  『何か必要ですか?』  『薬飲んでますか?』  母親か、という内容に少しだけ口元が緩んでしまう。  自分を心配してくれる人がいると知れただけでちょっとだけ元気がでた。  でも、そうすると弱い心は誰かに頼りたくなる。  だけど、頼り方を知らない私はこのメールをみてどうすればいいのかわからなった。  そんなの返信すればいい。簡単でしょ。悪魔の私がささやく。  こんな時ぐらい甘えなさいよ。普段可愛げないんだからちょっとぐらい可愛げ見せなさいよ。ズケズケと悪魔が入り込んでくる。  そんなの駄目よ。もう夜も遅いのに。明日からまた仕事でしょ。迷惑よ。    私の常識が悪魔を叱責した。  それに今までだって、ひとりでなんとかしてきたじゃない。  私は自分の中の常識に「そうだね」と鬱蒼と返した。
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