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 お腹が空いた、と思ったのに体調の悪さには勝てなくて結局そのままベッドから動けないまま、一日を過ごしてしまった。つまり、私は二日間寝たきり状態だった。さすがにシャワーを浴びたいし、お腹になにか入れたい。  ふわっと意識が浮上した時はいつも仕事に行く時刻と同じころだった。  だが、今日はシフト上休み。    …あ、そういえば昨日も志築くんと約束していたんだった。  忘れてた。というか、それどころじゃなかった。  私は慌てて志筑くんのメールを開く。  あの日から、志築くんと週に一度の外出は恒例になっている。  先週は少し足を延ばして横浜まで行った。中華街で食べ歩きをしたのだ。  東京に来て十年以上経つのに、横浜に行くのも初めてだった私は少しだけ気分が高揚したものだ。  志築くんには感謝している。どう考えても私といても楽しくないと思うのに、彼は毎週誘ってくれた。出かけても私は彼の話をうんうんと聞くことが多いし、あまり自分の話はしない。しないけど、聞かれれば答える。  それがわかっているからか、志築くんはよく訊ねてくれる。  一方的にお守りをされているような気がしないでもないけれど、彼はそれでいいと受け入れてくれていた。  だから、それに甘んじていたけれどやっぱり良くないと心のどこかで思っている自分もいる。    
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