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 「三十八度七分ですね」  志築くんが眉を寄せる中、私は熱が下がったことに内心で安堵していた。  そして今、二日ぶりにお風呂に入って少し気分がすっきりしている。  だが、心配性の彼にすぐに布団に寝かされてしまう。  ちなみに今は彼の言う通り、Tシャツに長ズボン。ハーフパンツはなかったので、比較的着ていて楽な素材のものを身に着けた。  そして、二日間汗を吸ったシーツはただいま洗濯中。替えのシーツをてきぱきベッドメイクしてくれた彼は以前勤めていたホテルの研修で身につけたという技術を披露してくれた。おかげでとてもきれいにシーツが敷かれている。  この後崩すのが申し訳ないぐらいだ。  「何か胃にいれて薬飲んで寝ましょう」  志築くんは私がシャワーを浴びている間に部屋を換気してくれたらしく部屋の空気が良くなった。外はとても暑そうだけど、冷房を最小限にしていた室内の方が蒸し暑く感じる。  「何か食べられそうですか?」    冷蔵庫の中は何があっただろうか。  志築くんの質問に頭を捻る。  「食べたいものはないですか?フルーツとかゼリーとか、俺買ってきますよ」  志築くんの優しさがじんわりと胸にくる。体が弱っているとこう優しくされると駄目ね。なんだか涙腺が弱くなったみたいだ。  「…桃缶」  恐る恐る食べたいものを告げてみた。  志築くんは柔らかく微笑むと小さく頷いて「他には?」と聞いてくれる。  他にと言われて喉ごしの良いものをお願いした。  扁桃腺が腫れているため、固いものはいらない。できればスッと飲めるようなものが良いとお願いすると快く了承してくれた。  「鍵、借りていいですか?」  買い物に行くという彼は玄関に向かって戻ってきた。  私は会社の鞄に入れっぱなしにしていることを伝える。  志築くんは鞄からキーケースを取り出すと「借りますね」と部屋を出ていく。  お風呂に入って、体力を使ったせいか、志築くんが出て行ってしばらくすると自然と瞼が落ちてしまった。  
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