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 「こちらがチャペルです」  プリエールの建物自体は明治時代に栄えた旧華族の屋敷を改築した建造物で、国の重要文化財にも指定されている。  外観はクラシカルで西洋風の建物だが、内装は近代風にアレンジされ、エレベーターもあれば冷暖房完備・洋式トイレ(自動でトイレの蓋が開く)という、最大級のおもてなしを目指した改築が行われていた。    「……落ち着いてますね。だけど、地味じゃない」  「ええ。比較的シックな挙式をお望みの新郎新婦様がお客様としては多いですね」  今、志築さんを案内しているのは式場のメインであるチャペル。チャペルは建物の二階にあり、温かみのある木の色で統一された造りになっていた。  いわゆるレッドカーペットも赤というより深紅に近い。紅色というよりボルドーに近い赤のため、非常に上品でかつ落ち着いた印象に見える。  そんなチャペルをしげしげと眺める志築さんに説明を続ける。  「こちらが披露宴会場に繋がる扉です」  チャペルの後方に扉が三つある。ひとつは新郎新婦が入場する扉。あと二つは、左右に一つずつあり、どちらも披露宴会場につながる階段だ。  「これだと、ブッキングしないですね」  挙式は一時間、披露宴は二時間半と非常に長い。  新郎新婦様の中には、他挙式の参列者と顔を合わせたくない、という方もいらっしゃる。  もちろん、間違えて他の挙式会場を覗いたりするようなことがないようにするための策でもあったりする。     
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