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 志築くんは最後まで私にせっせと食事を運ぶことをやめなかった。  自分でスプーンを取ろうとするとやんわりと逃げたり、話を逸らしたりとひらりひらりと躱された。  「お待ちかねの桃ですよ!」  そして今。お粥を食べた後のデザートタイム。  ひんやりと冷たい桃を、食べやすくカットしてくれた桃が綺麗に器に並んでいた。  それをフォークで挿して「はい、あーん」と第二次大戦が始まっている。    何の辱めですか!と怒りたいけど体力も気力もない。もうされるがままだ。  諦めて口を開けて餌をもらう姿はきっとひな鳥と同じだろう。  「…冷たい、おいしい」  「いっぱい食べましょう!あと、桃缶のストックあるのでしばらくは毎日食べられますよ」  一か月は食べられます、とどや顔で言う彼に冷静な私が慌てている。  待ってほしい。そもそも一か月って一体何個買ったのよ。  「業務用でまとめて買った方が安くて」  つい、と彼は笑う。てへぺろ、と擬音語が聞こえた気がするのは熱のせいだと思いたい。  「俺も食べたかったんで半分持って帰ります。いいですか?」  「もちろん。そんなにも食べられないわ」  「缶詰は日もちするので保存食でいいですよ」  彼はそう言うと、私が咀嚼している間にポイと口に桃を入れた。  「あー、甘い。冷たい」とおいしそうに食べている。  「ご馳走様」  「もういいんですか?」  「うん。お腹いっぱいよ」  久しぶりに食事らしいものを食べたせいでもうお腹いっぱいだ。  おかゆもきっとお茶碗一杯分と少なめに作ってくれていたとは思うけど、水分を含んだそれはしっかりとお腹にたまる。
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