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 薬を飲んで昼寝をした。  起きたら部屋が真っ暗で、志築くんはもう帰ってしまったのかと気づく。  よいしょ、と体を起こして暗い部屋の中で明かりのチャンネルを探す。  だけど、それを見つける前に部屋に明かりが灯った。  「あ、起きたんですか」  がちゃ、と部屋に入ってきた彼は当たり前のようにやってくるとおでこに貼り付けてもう冷たさのなくなった冷えピタを剥がしてくれた。  「ちょ、」  「…朝よりましですね?」  そしておもむろに私の額と自分の額を合わせると熱を確かめている。  「あ、あのっ」  「なんですか?」  「そ、そんなことしなくても普通に体温計で測ればいいと思う、の」  むしろそんなことされると心臓に悪い。余計に悪化しそう。  それなのに尻すぼみになっていくのは志築くんの笑顔が何故かとても怖いから。  「…なんか、怒ってる?」  「いえ。風邪ひいても彩羽さんは彩羽さんだと思って」  「…どういう意味?」  そっと近づいた距離を離れていく彼は小さく首を横に振る。  「なんでもありません」と付け足すと「食事にしましょう」と笑った。
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